HAB Research & Brothers



農村に就農住宅の建設を

1999年10月23日(土)
雨漏り実験室の"チャ"



 今は都会でサラリーマン生活を送っているが、定年になったら農業をやりたいとか自分の食べる分だけでも野菜や穀物を作りながら余生をおくりたいという人が増えているそうである。定年を迎えるサラリーマンの1割から2割は真剣にそのようなことを考えているそうである。

 しかし、今の制度では農家の出身者は容易に農業に就くことができるが、それ以外の人はなかなか難しいという。農業の後継者不足・農地は減反で余っているという時代にせっかく農業に就きたいといっている人がいるのだから、就くことができるような振興策を出すべきである。

 農地や農機具は過疎に悩んでいる自治体や農協が提供してくれるところもあるとのことだが、問題は居住環境である。定年後農作業を行うことのできる期間はそれほど長くない。数年間だけ田舎で暮らし、体が動かなくなってきたら都会で暮らしたいという人も多いはずである。そのような人のために、以下のような賃貸住宅のモデルを考えてみた。

 ●住宅 (定年を迎えた老夫婦用賃貸1戸建)
 平屋建で建物の広さ 150−200平方メートル 。単に二人だけで住むには広すぎるが、作業を行ったり、週末子供たちが泊りに来たときに寝泊まりできるスペースは必要である。

 高耐久、省エネルギー、バリアフリーなど高水準住宅ソーラーシステム(10kwの太陽光発電と暖房・給湯用の太陽熱システム)を備える。5kw分は賃貸している家庭が消費、あとの5kwは売電するとすると月1万円程度の利益を得る。これは諸経費に充てる。

 住宅は規格化して大量に作れば、1800万円以下にできるのではないだろうか。太陽光発電システムは700万円だがその2分の1の補助を受けるとものする。

 10kwの発電システムで、10年間で100万円の発電補助も受ける。この100万円は30年間のソーラーシステムの性能維持に使うものとする。5kwの太陽光発電と太陽熱システムがあれば、標準的な使い方で光熱水料は無料にできる。1800万円は30年使うとすると月5万円である。家賃は管理費含めて5.5万円とする。テレビの受信料、電話、ネットワークなどの通信費、交通費は半額補助。

 ●宅地・農地
 宅地と夫婦2人で年間消費する食料分を確保できる分の農地・農機具・肥料・農薬・その他農作業に必要なものは月5000円程度で提供・レンタルする。

 つまり、月6万円で住宅、自分の食べる食料を賄える農地、農機具などが提供されるものとする。これを基準として、交通の比較的便利なところ・ゴルフ場や温泉に近いなど立地の良いところは月7−8万円あるいは10万円以上とし、過疎に悩むところは月2−3万円(あるいは無料)とすれば全体の事業としては赤字にならないようにできるだろう。

 定年した人だけでなく、中高年の失業した人も希望するかもしれない。高齢者対策だけでなく、失業対策にもなる。

 また、田舎にこのようにエネルギーも自給できる良質の住宅が多量にあるということは、国の安全保障にとっても好ましい。たとえば、阪神大震災のように都市部で大きな災害が起こったりしたら、田舎に親や親戚が暮らしている人はすぐにそちらに避難できる。仮設住宅などは最小限にできる。都市部の大きな災害は100、200年の間には必ず起こるのである。

 農作業は、子供や孫に休みの時に手伝ってもらうのも良い。孫にとっては貴重な体験になるはずである。将来、孫が大きくなったら農業に戻るかもしれない。食料費、住居費、光熱水料などすべて含めて数万円で済むのなら、老後の蓄えのなかった人でも年金だけで快適に過ごせるのではないだろうか。

 また、マイホームをすでに所有している人は、田舎にいる間、自宅を月数万円で貸し付けるとすると年金はまるまる趣味・旅行などに使うことができる。かなりリッチな老後を送ることができる。

 高齢者でも自分が食べる分だけなら週1日程度の農作業で済むはずである。林業・水産業などの他の一次産業でも同じようなことができる。週1回の作業で食料に相当する分のお金あるいは現物支給を受けることができるようにすれば良い。また、少し規模の大きいハウス栽培などをグループで運営するのも良いかもしれない。

 週1回だけでなく、さらに多くの作業を行いたいと希望する元気な老人には農地を貸し出し、現金収入が入るようするべきである。規模を大きくできないような農地はこのような制度によって有効に活用することと、規模を大きくできるところではさらに集約化して効率化する(こちらは若い人向け)ということを組み合わせて行えば、農業は活性化すると思うのだが。


以下は、「定年帰農/定年就農」のQ&Aである。
■基本的に投資をした金額は7年で元を取るのが商売の基本。仮に10年としても月額15万円。記事には月額5万円とあるが、差額の10万円は補助金によるもの?

これは商売ではありません。最近の高耐久仕様の家は50年ぐらいの耐久性は十分あります。30年ぐらいで元を取れれば良いと思っています。これは、過疎地対策、高齢者対策、農地保護、エネルギー政策、住居等のインフラ整備、などが複合した政策です。政府が最終的に負担する額は、金利とメンテナンスの費用分(全体の2割から3割)程度で良いと思います。現在の住宅取得促進減税は、住宅取得価格の1割ほどを住宅の性能の良否に関係なく補助しています。私はこれをやめて、このような次世代に役に立つ住宅に2割とか3割補助をすれば良いと思うのです。

2割〜3割ぐらいなら、政府は法人税・消費税・雇用者の所得税で投資額を回収できます。それで、農地が維持でき、インフラが整備され、新しい産業ができたら大成功でしょう。

ただ、実際にやろうとするといろいろ難しいこともあるでしょう。運営を政府の外郭団体にまかせたり、第三セクター方式にすると責任があいまいになってほとんどの場合失敗するでしょう。

入居する人が入居時にある程度(全額でも良いですが)出資して、マンションの管理組合のような形式で運営に参加し、退去するときは出資金+インフレ増加分+アルファが戻ってくるようにすれば良いと思います。

■借地のお金はどうするのか。

私の住んでいる地域は東京から車で50分程度ですが、60坪の宅地の定期借地権の地代が月1万円というところがあります。農地ならこの数分の1でしょう。休耕地もいたるところにあります。地代は村や町が負担するから人が来て欲しいという過疎地もたくさんあると思います。

■機械の代金を月5000円程度でレンタルする、とのことですが田植え機や稲刈り機は安くして500万円。人が乗ったまま作業が出来る高級品(?)ですと1000万円程度、寿命は10年程度。

稲作はおっしゃるとおり個人でするには適していないと思います。減反政策を続けているのにいまさら稲作を増やすことは難しいでしょう。稲作はもっと集約化すべきです。私が考えているのは集約化できないような土地を使った畑作です。200〜300坪ぐらいの畑があれば、老夫婦2人の食べる野菜や芋を作るには十分でしょう。完全な自給自足をせよと言っているわけではありませんから、米などは、足りなくなれば買えばよいのです。体力のある人は、田植えや稲刈りの時に手伝って、現物支給で米を貰っても良いかも知れません。

■小売業などは頭金をためて、銀行の融資を受けて、開業することも可能と思いますが、農業は、付加価値の高い品種,たとえば花とか果物などでなければ、開業することが出来ないと思います。

これは、退職した人が片手間でやる農作業です。いわば、隠居生活者ですから、ほどほどの食糧が獲得できたら、あとは遊んで暮らすような生活です。普通の人は、開業して市場に作物を出そうとはしないでしょう。農作に失敗したら買えば良いし、余った作物は知人とか家族に分け与えれば良いのです。 ただ、中には専業農家顔負けの技術・情熱・体力を持った人もいます。農家出身でない人も農業を営むことができるようにする法整備は必要だと思います。

■都市部の方がかってに机上の空論を述べる事は勝手かと思いますが、あくまで、補助金等があっての前提だと思います。

私は田舎出身ですし、今も都市部には住んでいません。

家の前には400坪ほどの畑があります。この畑は去年までは休耕地で草ぼうぼうの状態でした。おそらく持ち主(農家)が年老いてこの畑まで手が回らなくなったのでしょう。今年、その畑の150坪ほどをサラリーマンを退職されたかたが借り受けて作物を育てておられます。かなり多くの種類(30種以上)の作物が育っています。本を読んだり、農家の人から指導を受けたりしておられるのだと思いますが、畝の作り方など畑作の技術はプロ級です。周辺には専業農家の畑もありますが、それに勝るとも劣らない出来栄えです。先週末は子供や孫たちが来て芋掘りをしていきました。老夫婦2人ではとても食べきれない量だそうです。我が家でも時々余ったものをいただいています。使用した機械は耕運機と農薬や肥料の散布機、草刈機程度です。(耕運機は農家の人が操作)

この畑以外にも休耕地は所々にあります。私も退職していて時間が余っていたら、畑を借りたかもしれません。補助金がなくとも、農地を貸したいという人も農地を借りたいという人もいるのです。

■30年前に通産省が電気電子産業に補助金を出したような、前向きの投資なら私も補助金に賛成しますが、現在の農林水産省などがばら撒いている、後ろむきの予算の使い方には、反対です。なぜなら、右肩上がりの成長が望めない現在、国債等の借金による補助金は、やがては、私や私の子供たちが支払うことになるのですから。

私もそう思います。繊維、鉄鋼、造船、半導体など政府の補助金などの政策によって日本を支える産業に成長したものはたくさんあります。しかし、どれも新興国に追い抜かれてしまいました。もっと適切な戦略を立てて政策を行っていればこれほどまでにはならなかったのにと思います。政府は今後は情報とバイオを重点化すると言っていますが、どちらも外国に遅れをとっています。市内通話の無料化もできないのに日本の情報産業が世界をリードするとは思えません。(これから有望なのはせいぜいゲーム産業ぐらいでしょうか)

でも、今の日本には政策次第で年間十兆円を超える規模の産業になる可能性のあるものがまだあると思います。太陽光発電などの新エネルギー、新世代の車、亜寒帯から亜熱帯までの広い範囲の気候に適した住居及び住に関連した福祉・環境・文化などです。これらの産業を推進することもこの事業の目的です。もし、新エネルギーなど新しい産業が日本で立ち上がらなかったら、それこそ日本の将来はお先真っ暗です。国の未来を左右するような産業を立ち上げるには補助金などのサポートが必要だと思うのです。


■島根の高橋様より、以下のような情報をいただきました。実際に計画がなされているものです。私が提案しているような数年間の移住型の住宅より小さいですが、セカンドハウスとして適していると思います。退職されたかたが春から秋にかけて農村で主に暮らし、冬は都会で主に暮らすという人にもってこいの住宅です。若い家族が週末を過ごすための住宅としても人気がでるかもしれません。いろいろな種類の農園付き住宅の企画があれば良いと思います。

 10月23日付け マグマグの記事を拝読させていただきました。
 島根県飯石郡頓原町志津見地区に貸し農園付きの住宅の建設を計画しています。もちろん農家の方でなくても結構です。
 農園の面積は200u、住宅の広さは20坪(台所、居間、寝室を備えた住宅で夫婦2人の生活が可能ですー木造二階建て、電気水道下水道整備)農園は畑作を目的として造成してあります。耕作用の機械は共同使用を前提として貸し出し(無料)とする予定ですので、新たなの耕作用機械の購入の必要はありません。
 農園の貸出料はu当たり年間100円、住宅は年間30万円の予定です。
その他、共同利用施設(農村交流促進施設ー管理棟をかねる施設)がありますので、その使用料、住宅の電気水道下水道料金は別途必要です。
 入居者の資格は、上記に申し上げましたように特別ありませんが、年間を等してイベントが開催されますのでそのイベントに出席できること。
 1週間に1日は滞在のできる方,共益部分の共同作業に参加できる方等が条件です。退職されて、当面滞在される方は問題ありません。
 さらに特色として、地元の農家の方と親戚関係を結んでいただき、農業指導を受けながら野菜作りを楽しんでいただくことがきます。
 作られた野菜を出荷して、現金化することは考えていません。あくまでも、農業を楽しんでいただくための施設としてお考えください。

 頓原町の地理的位置は広島県広島市から国道54号経由で松江市市方面に向かい車で2時間あまりの広島県との県境付近に位置します・山間の自然に囲まれた静かな寒村です。

 事業実施予定 平成13年度 一部は平成12年着工
事業者      頓原町企画課 рO854−72−0311 fax 72−1132
建設規模    住宅及び貸し農園  38戸

 *この計画は最終的に決定されたものでありません。
   皆様方のニーズを調査の上、規模等を検討し建設される予定のものです。
   この計画に対して、ご意見がございましたら、頓原町あるいは島根県企画振興部 高橋(п@0852−22−6307)までお問い合わせください。

トップへ 前のレポート


© 1998-99 HAB Research & Brothers and/or its suppliers. All rights reserved.