みんながコメ作況指数を疑った1994年1999年10月05日(火)萬晩報主宰 伴 武澄
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今年もコメが豊作だそうだ。農水省が発表した9月15日時点でのことし穫れるコメの作況指数は1カ前の調査より1ポイント下がったが、102である。 めでたいことなのだが、不幸なことに日本の農業ではコメの豊作を喜んではいられないのである。豊作はコメ余りにつながる。余るということはコメの市況に影響する。おかげで9月の自主流通米の入札では応札された半分しか値が付かなかった。売れ残ったのである。 きょうは作況指数について考えたい。農水省が8月から10月まで毎月、発表するれっきとした政府の統計指数である。その指数が信用できないと騒いだ年があった。1994年である。大凶作でコメの大量輸入を余儀なくされた翌年の話だ。 以下は1994年11月に筆者が書いた記事の転載である。 「本当にコメがそんなにできているのか」。昨年の凶作から一転、1994年産米は大豊作が確実となったが、農水省が発表する作況指数に対してコメの流通業者などから「昨年は低すぎたし、今年は高すぎる」「政治的な意図を感じる」などと疑問視する声が相次ぎ出ている。指数が示す収穫量と流通の実態にずれがあるからだ。作況指数に政策的な意図が入る余地はないのか、収穫量をどこまで正確にとらえているのだろうか−。 取材不足もあって、真相は藪の中だった。だがこういう話もある。多くのマスコミでは選挙の度ごとに候補者の当落予想アンケートを行うが、新聞紙面に発表される前に政治部の記者が「鉛筆をなめる」という作業をする。 アンケート結果をそのまま紙面に掲載するのではなく、永田町での情報収集をもとに若干だが数値を調整するのだ。しかし「鉛筆をなめた」結果が外れ、アンケート調査の生の数字が選挙結果により近かったケースがあまりにも多かったため、一部マスコミはこの作業を辞めた。 統計数値もこの限りにない。ことし1−3月のGDP速報が年率7.9%と出て、週刊ポストが「粉飾」と騒ぎ、堺屋経企庁長官が怒ったケースもある。巨大な国家という機構のなかでは何が起きているか分からないのである。 |
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