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沖縄の普天間基地を苫東に移転させるという妙案

1999年09月01日(水)
萬晩報主宰 伴 武澄



 ●計り知れない経済効果

 民間の研究機関である日本リサーチ総合研究所が、このほど事業が破たんした北海道・苫小牧東部開発地域に沖縄の普天間飛行場を含む沖縄のアメリカ海兵隊の基地機能を移転させるという報告をまとめた。一石二鳥、一挙両得、妙案だと思う。

 普天間飛行場は、1996年の日米特別行動委員会(SACO)最終報告で返還が決定したが、移転先のめどは立っていない。大分県の平松知事が一部を受け入れてもいいというような発言があったが、話がすすんでいるようではない。

 この報告によれば、移転する施設は普天間飛行場、キャンプ桑江、牧港補給地区など6施設。苫東地域への移転に必要な土地面積を1200ヘクタール、建設工事費は3000億円としている。一方の苫東地域は国家プロジェクトとして推進されたが、事業を進めてきた第3セクターは1800億円の借金を抱えて経営的に破たんし、1万ヘクタールの広大な用地が遊んでいる。

 大規模空港が近くにあり、港湾設備も整っている。基地の経済効果は計り知れない。基地の後方支援から何万人もの海兵隊の家族の生活を支えるインフラ整備は首都機能移転に匹敵する経済効果をもたらすに違いない。

 この報告書は、政府系のシンクタンク、総合研究開発機構(NIRA)が民間に委託したもの。研究所は「あくまで一つの想定だが、議論が活発化するきっかけになればと思う」と涼しい顔だが、政府関係者は突飛な発想に当惑気味らしい。

 ●沖縄に限定していない普天間の代替地
 日本には横須賀、横田、座間、岩国、三沢などいたるところにアメリカ軍基地がある。なかでもとりわけ規模の大きいが沖縄である。

 沖縄の基地問題が浮上する度に思うことは、小さな島にアメリカ軍が集積しすぎているという事実である。そもそも沖縄が要塞化したのは日米の合意に基づくもでも何でもない。戦前の沖縄に日本軍の大規模な施設があったわけではない。戦後の講和条約を過ぎてもアメリカが居座って拠点基地化したからに過ぎない。

 そもそも普天間基地の移転問題は95年のアメリカ兵による少女暴行事件に端を発する。4年もたったいまとしてはこの事件もかなり風化してしまっている。だが日本におけるアメリカ軍基地と住民との関係は本土と沖縄戸では決定的に違う。

 戦後27年間、アメリカは沖縄を「海外領土」と位置づけてきた。72年の返還後もその意識が続いているところに大きな問題がある。その認識をあらためてもらうためにも北海道への移転はいいことなのだろうと思う。

 基地の効率的運用のため、アメリカとして移転先が沖縄にあってほしいと考えるのは当然である。しかし日米特別行動委員会(SACO)最終報告では普天間基地の移転先について、代替地を沖縄に限定しているわけではない。日本政府がアメリカの意向をおもんばかって、沖縄にその代替地を求めようとしている。

 萬晩報は、小渕首相が沖縄を来年のサミット会場に決めたことは英断だと考えている。だが、サミット誘致と普天間基地移転とを取引材料にしているのだとしたら、大きな問題だ。

 苫小牧東でなくともいい、下北半島でもいい。普天間基地の移転先はいったん沖縄から外して考えるべきだ。

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