NTT再編(1)--不揃いの人員配置1999年07月01日(木)萬晩報主宰 伴 武澄
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●競争力を落とす地域通信会社 NTTがきょうから再編されて通信業界は大競争時代に入ったという。マスコミはきょうの紙面で大きく取り扱っている。いくつか問題がある。第1はNTTは分割されるのではなかったのかという問題である。第2は連結決算の時代に突入した今となっては、この程度の「再編」ではNTTの経営は何も変わらないということである。株式の59%を大蔵大臣が抱えたまま、何が競争かという基本的問題もある。 今回の再編を分かりやすくいえば、NTTが営業部隊を3つに分けて子会社化しただけのことである。基本的にはDDIや日本テレコムなど第二電電にならい、まず長距離電話部門を「NTTテレコミュニケーションズ」と名付けて分離、残りをNTT東日本とNTT西日本に分け、研究所はNTT本体に残した。 問題は、この分け方である。13万8000人の職員の分け方はあまりに不揃いである。以下の図を見てほしい。2000年3月期の人員と売上高見通しである。
3子会社の売上高費が大まかに2:2:1となっているのに、職員比は61:68:6である。宮津純一郎NTT社長は今後、3万人のリストラをするといっているが、これではあんまりだ。事業内容が違うのだから職員の数だけで単純比較できないが、仮に売上高ベースでみるかぎり、NTTコミュニケーションズはNTT東日本の5倍の競争力であることになる。 今回の再編の最大のポイントは、長距離分野でDDIや日本テレコムなどと直接的に競争関係となる分野でそれ相当のスリム化を果たすことだった。この結果、どうなったか。独占分野のNTT東日本と西日本はその分、相対的に競争力を落とすことになったのだ。 NTTグループに中で競争力を増したのは、研究所を抱えたNTT本体とNTTコミュニケーションズだけである。出来のいい生徒による少数精鋭教室をつくって、その他大勢の出来の悪い生徒を分離させる最近の私立学校のようなものである。 そもそもNTTはリストラを繰り返してスリム化した欧米の通信企業と比べて、とんでもない余剰人員を抱えている。どれくらい過剰かは分からない。半分でいいという話もある。主要都市のいたるところにあるNTTビルをみれば、資産も過剰である。東西の地域会社は当然、こうした資産も引き継ぐことになるのだろうが、電話の使用度数は"民営化"から14年で何倍にも増えているのに、NTTの収益構造が格段の改善を見せなかったのはひとえにこの人員過剰にある。 NTTが再三にわたって地域料金値下げを拒否する構造はここにある。NTTグループ内で試算すれば、アメリカに比べて高い市内電話との接続料金はきょう以降、さらに高くなるはずだ。
●ようやく"実現"した17年前の答申 NTTの今日のような再編が提言されたのは90年3月。郵政大臣の諮問機関である電気通信審議会がNTTを「長距離と地域会社に二分割する」と答申したが、政府は「95年度中に結論を得る」として先送りを決定。 96年2月にもまた、同じ電気通信審議会が「NTTを長距離通信会社一社と、東西の地域通信会社二社に分離・分割」と答申したが、政府はまたもや結論を先送りしてきた。NTTが政界と労働界を巻き込んで、分離を阻止してきたというのが真相である。 しかし、世界的な通信の大再編が進む中で、NTT分離問題は96年12月にようやく決着した。なんと持ち株会社の元に長距離通信会社と東西の地域通信会社に分離するという玉虫色の「分離・分割」となった。 このとき、政治的には「分離」という言葉が使われ、郵政省、NTT双方に顔を立てる決着方法だった。勝利したのはNTTである。持ち株会社の下での事業の分割などは連結決算が重視される今日では単なる社内の再編でしかないからである。 もっとも電気通信審議会の答申通りに分割が決まっていたら、3社間で資産と人員の分け方で収拾のつかない争いとなっていたに違いない。 ただ、17年間のも間、分割論議を放置してきたつけは決して小さいものではない。ものごごろがついた子どもが就職するような長い年月である。 アメリカの巨大通信会社、AT&Tが独禁当局の命令で分割に応じたのは1984年である。日本が85年の電電公社民営化の時点で分割していたらどんなにか世の中変わっていたかと考えるといたたまれなくなる。 複数の地域会社と長距離会社に分離されたAT&Tは、世界有数の頭脳を持つといわれたベル研究所もまた分割の対象となった。ベル研究所はルーセント・テクノロジーと会社名を変え、世界的なハイテク企業として君臨しており、AT&T自身はここ数年に始まった通信事業の世界的な提携・合併の渦中にある。(続)
参考:1998年01月15日付萬晩報「大蔵大臣が3分の2を所有していても民営NTT」は |
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