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4月に新しい風が吹く予感

1999年01月05日(火)
萬晩報主宰 伴 武澄


あなたは目の読者です。

 1999年4月には統一地方選がやってくる。新しい風がまた吹くのではないだろうか。風が吹けばまた何かが変わる。昨年4月2日付萬晩報「5年前の興奮を思い起してもう一度わくわくしよう」で参院選への期待を書いた。変化への期待感を抱けることが暗い世相を明るくするのだと思う。景気が回復したら世の中明るくなるのではない。人々が明るさへの期待を抱くから景気が回復するのだ。

 ●過去のしがらみからの決別
 新しい風が吹くだろうという考えに根拠がないわけではない。昨年の参院選では大方の予想に反して投票率がアップし、既存勢力が惨敗した。まだ参院選でしかないが、有権者は「投票に行けば政治が変わる」ことを知った。有権者の心の中ですでに大きな変化が起きているのだと思う。

 昨年末には神奈川県逗子市長選挙で31歳の市長が誕生した。これも変化の前兆である。長島氏は筆者が農水省を担当していたとき、フジテレビの記者として一緒に仕事をした経験がある。まだ荒削りだが、市民は過去のしがらみのない候補者として1票を投じたのだと思う。

 さらに一部では住民運動が新しい動きを示し始めている。昨年の神戸市の空港建設をめぐる住民投票条例制定の署名運動は2万人を超す市民が運動に直接参加し30万人の署名を集めた。既存の政党を超えるビッグパワーが出現した。徳島県の吉野川堰建設でも既存勢力に対抗するパワーが生まれている。

 いま悪いのは、戦後日本の政治劇を演じてきたキャストたちである。どんな経歴を持っていようと今となっては過去のしがらみが多すぎる。いまキャストを入れ替えることに不安がないわけではない。しかし、新しいキャストたちも数年経てば経験を積むことになる。少なくともしがらみがない分だけましなのではないかと思う。自治体レベルで新しいトレンドが生まれれば、次の国政選挙がさらにわくわくできるようになる。

 ●無くしたい無投票選挙
 正月の朝日新聞を読んでいて驚いたのは、無投票で選ばれた市町村長が4割もいたことだ。全国3255市町村のうち1346人の首長が無投票だと言うことだ。愛媛県の一本松町などは4代12回、つまり48年間選挙がなかった。三重県河芸町にいたっては米倉智町長が7期28年間にもわたって町政を担ってきたそうだ。

 こんなのは民主主義ではない。これは絶対に住民が悪い。98年4月30日付萬晩報「独立北海道では大統領や知事は3選禁止」で長期政権の弊害を語った。

 大統領も自治体の首長も任期は、2期8年までとし3選は禁止すべきだと考えた。任期についてアメリカ大統領の2期8年を参考にした。日本の企業でも社長の任期は3期6年がほどよく、最長でも4期8年が限界とされている。それから3人以上の候補者がいて、投票総数の過半数を得られない場合にはフランス大統領選のように上位2者による決選投票を実施すべきである。

 知事や市長といった住民の直接選挙で選ばれる首長はアメリカ大統領と同じで絶大な権限を持つ。もちろん制度的には議会が行政のチェック機構として機能する仕組みにはなっているが、国と違って地方行政には強力な官僚軍団もない。

 そんな首長が、10年も20年もトップの座につけば自治体行政は半ば「独裁化」する。高邁な理念と行動力を持っていればなおさら求心力が強まる。「求心力」と言えば肯定的で、「独裁」だと否定的な表現となるが、政治力学的にいえば「求心力」も「独裁」もあまり違わない。

 そんな強大な権力を持った自治体首長の当選をわれわれは無投票で許してきたことを大いに反省しなければならない。誰でもいいと言うわけでもない。若ければいいというものでもない。だが政治や行政の経験は実はしがらみそのものなのだ。長期政権や無投票が続く市町村だけでない。ひとも勇気ある若者の出現を期待したい。

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