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サポーターがフリューゲルスを買収するという秘策

1998年11月09日(月)
萬晩報通信員 市川 徹郎


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 Jリーグの横浜フリューゲルスが横浜マリノスとの合併で消えようとしている。そもそもの原因はスポンサーの一つである佐藤工業が撤退する事にある様だ。同社は富山に本社のある建設業の会社であり、バブル崩壊の影響で業績は低迷している。この不況下にスポンサー名も出ないJリーグにいつまでも出資していられないというのは、企業論理としては良く解るし、個人的には仕方無いかなと思う。今回の騒動で佐藤工業の知名度が一気に高まってしまったのは皮肉と言えば皮肉だ。

 しかしフリューゲルスの熱狂的なサポーターにとってはそうでは無かった。先日もサポーター側とクラブ側が徹夜で話し合ったがお互いの主張は平行線を辿ったままだ。企業側からすれば不採算部門を切り捨てようとしているだけであり、そこに幾ら感情論で存続を訴えても通る筈がない。企業と交渉する時には企業論理をもってするのが最も効率的であろう。

 そこまで考えて思い付いた事がある。

 結論から言おう。フリューゲルスのサポーターが共同出資して佐藤工業の株を取得するのである。熱狂的なサポーターのうち、ある程度の出資が出来る人がどの位いるのかは解らないが、横浜という都市の規模からして数千人は下らないだろう。仮に4000人として、一人あたり10万円ずつ出資すれば4億円である。前述した様に佐藤工業の業績は低迷しているので株価も安くなっている。

 最盛期には800円を越えていたのに今では二桁である。100円で買ったとしても400万株、もし80円で買えれば500万株である。五500万株は佐藤工業の全株式の約2%に当たり、株主としても五番目の大株主という事になる。会社である以上、これだけの大株主の意向をおろそかにはできまい。

 ひとり10万円は高いと思われるかもしれないが、これは寄付ではなく投資である。スポンサーがコケたらサポーターだって困るだろう。順調に業績を伸ばしてもっとJリーグの発展に貢献して欲しい、その為に会社を応援するというのも立派な投資の理由ではないだろうか。フリューゲルスのサポーターが安定株主になってくれれば会社も助かるだろう。そうして業績が好転してくれば元を取るどころか、何倍にもなって返ってくる可能性だってあるのだ。もちろん逆の場合も有り得るのだが。

 要するに、サポーター側からすれば、フリューゲルス存続の可能性はぐんと高まるし、うまくいけば出したお金も何倍にも増やせるという夢の様な話である。佐藤工業側にしても、安定株主が増え、話題性から宣伝効果も上がり、更に今回の騒動によるマイナスイメージを払拭する事もできるだろう。

 もちろん良い面ばかりではない。もし佐藤工業の業績が極端に悪化すれば、今度こそフリューゲルスの存続は絶望的、出したお金も返ってこないという最悪の事態も有り得る。危険な賭けといえなくもない。しかし、徹夜で交渉するエネルギーがあるのだから、多少のリスクを負う事も可能なのではないだろうか。

 サポーターの方々、如何だろう。私自身はフリューゲルスのサポーターではない。今回はあくまでも提案をしただけで、実際にやる、やらないはサポーターの皆さん一人ひとりが自分自身の判断で決めて頂きたいという事を念の為申し添えておく。(Tetsuro ICHIKAWA・長野市民病院臨床病理科)


 【萬晩報から】筆者も思いつかなかった非常に面白い問題提起だと思う。しかし、2%の株式取得では経営を動かす力にはなれないし、実は年収億単位のJリーグ選手がいるなかで、4億円ではクラブの1年間の経費も賄えないという切実な問題がある。万単位のサポーターが10万円を出資しようということになれば、事情は変わってくる。佐藤工業の経営が立ち直るまでのつなぎとしてサポーターが資金面で支えるという発想は生きてくると思う。(伴 武澄)

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