HAB Research & Brothers



「読者の声」9月23日号「労働省で『詐欺』と叫んだ独自ダネ記事の顛末」

●MSNニュース&ジャーナルに『「詐欺」としか思えなかった労働基準法の改訂』
と題して転載されました

1998年09月05日(月)
萬晩報主宰 伴 武澄


あなたは目の読者です。

 久しぶりの「読者の声」です。08月23日「労働省で『詐欺』と叫んだ独自ダネ記事の顛末」には過酷な実態の報告やいろいろな角度からの問題提起がありました。

 コラムで触れた、大企業の週40時間労働労働は製造現場レベルでは達成しましたが、ホワイトカラーでは「うそ」でしたし、いまでも「うそ」が続いています。「勤務時間を正確につけない」サービス残業が慣行化しているからです。

 そもそも週法定労働時間は「現場労働者」のためにつくられたものです。19世紀のヨーロッパでの炭坑など現場労働の過酷な労働条件を改善するのが目的でした。ホワイトカラーの労働と労働時間とは無縁とはいいませんが、オーバーラップしないのだと思います。多くの国ではホワイトカラーには裁量労働制がとられ、賃金も時間ではなく、成果に対する報酬を求める考えが導入されています。日本では、そこらも非常にあいまいに済まされています。

 問題の中小零細企業ですが、経済原則からいえば、労働集約でしか成り立たない企業は1ドル=100円時代の日本では業種や業態を代えていくしかないのだと思います。空洞化の論議にも、雇用の論議にもなるのでしょうが、為替が自由化された時代では、労働集約型の企業が無理をすればするほど通貨価値が上がるという悪循環に陥ります。

 1985年のプラザ合意は「日本は何から何まで作って輸出しないでそろそろ労働集約型の産業は途上国に譲りなさい」というサインでもあったはずです。個々の企業レベルでは異論も多いでしょう。多少、感情論になるかもしれません。ですが、いまの日本を「非常時」ととらえるのではなく、ここらを乗り越える必要が日本人に求められているのだと思います。(伴 武澄)


 ●nice report
MSN経由で拝見しました。大変よい記事だと思います。なお、労基法を含め労働省の作る法律のザル性については、法曹や業界人の間では常識です。現在衆議院を通過している労基法改正も、一歩間違えるとホワイトカラーの長時間労働を悪化させるばかりか、悪用されれば労働時間法制を壊滅させかねない危険性を持っています。詳細は長くなるので書きませんが・・・。その辺は、労働省の職員団体が詳しいでしょう。では、今後も鋭い記事を期待しております。(Tatsuya Haryu)
 ●中小企業が順法できなかった理由に触れてもらいたかった
 いつも萬晩報興味深く読ませていただいております。質問と意見がいくつかありますのでメールを送らせていただきます。

 まず、時短の件ですが法律の施行などに関する点では、私も同様にその他の法律についても似たり寄ったりで泥縄としかいいようのない場合が多いように思います。しかし中小企業が順法できなかった理由にもぜひ触れていただきたいと思うのです。

 大企業は法律よりも先行して既に時短が定着していたにもかかわらず、なぜ当時急激な時短をすすめなければならなかったかという点です。つまり貿易摩擦による外国からの圧力の矛先が労働時間問題に向けられたということです。確かに外国に比べて法的に未整備または遅れていた点を明文化することで外国からの圧力を回避するという効果はあったとは思います。

 しかし大企業の下請企業はもとより、その他の業種のほとんどの中小企業は時短前の労働時間を前提として事業を行ってきており、労働者の生産性向上がなければ事業の継続は不可能でした。そこで経営者は機械化などの工夫により何とかここ数年は乗り越えてはきましたが、昨今ではもう限界といえます。しかし問題は当時予想されていたとおり、現在の中小企業労働者がかつての勤勉第一という時代を忘れ、労働者の権利だけを要求するという昔の大企業の労働組合のような意識になってしまったところにあります。

 現在の大手労働組合は雇用の確保と企業の競争力という労使一体ともいえる方針で海外との競争に対処していますが、ほとんどすべての中小企業では自分の権利を主張することが当然というような空気ができてしまったのです。いま経済社会は非常時ではありますが中小企業の労働者で非常時という意識をもっている人がどれだけいるでしょうか。

 しかし彼らに責任があるわけではありません。政府・官僚が場当たり的な法律改正により社会習慣まで無理に急激に捻じ曲げたことに原因があると思います。ところで彼らに質問したいのですが労働省はじめ全ての公務員が全員基準内労働時間を守っているのでしょうか?

 つぎに先日の堺屋太一経済企画庁長官についての件です。私も就任直後のコメントには少なからず失望し官僚エゴのすさまじさに嫌悪感を覚えたものでしたが、最近はそれほどでもなさそうに見えます。実際はどうなっているのでしょうか。ぜひ「堺屋長官奮戦記」などをお願いしたいと思います。(矢田均)


 ●年間3220時間も拘束されています
 初めまして。いつもためになる「萬晩報」のメールを頂戴しまして感謝しております。さて、私は従業員6名の小さな事業所に14年ほど勤めておます。事業内容は、食肉小売り・卸です。しかし、最近では食肉小売業は不振で、実質的に食肉卸業といえます。

「萬晩報9月23日号」で、日本では、働き過ぎ論議もすっかり影を潜>め、週法定労働時間が正式に40時間となったいまも多くの除外業種や除外事業所規模が多く残っている−との結論でしたが、私達の事業所は正にこの典型です。私は朝6時50分に出社し、退社は早くて午後5時30分、遅いときは午後7時、平均午後6時です。土曜日も同じです。定休日は日曜日。月に一度の公休が貰えます。昼休みは食事時間を入れて40分ほどです。勤務時間中に休憩時間は全くありません。

 そうしますと週の労働時間はいかほどになりましょうか。おそらく昼休みを除外して63時間ほどになるかと思います。盆正月の休み(それぞれ日)を除いて年間3220時間も拘束されていることになります。

 勤務時間外手当の考えなど経営者には全くありません。そもそもこのような小さな事業所では労働協約など存在せず、雇用契約がまとまる際にも口頭で勤務時間を言われるだけです。雇われるものはその際、残業手当が出るのか出ないのかなど考えても見ないのです。

 「商売をやっているのだから、勤務時間が長いのは当たり前だ」。これが経営者の口癖です。私自身商人の倅ですから、あまり苦痛には感じませんが、入社してくる若い人はすぐ辞めていきます。残るのは40過ぎの人ばかりです。

 たしかに同業者の事情も似たり寄ったりで、私の勤務先ばかりがこのような劣悪な事業所ではないのですが、労働省がどの程度こんな実情を把握しているのか知りたいものです。歳のせいかグチになってしまいました。失礼しました。(寺島 章=横浜在住)


 ●「労働省で「詐欺」と叫んだ独自ダネ記事の顛末」を読んで
 いろいろ感想を書かなければと思いつつも、あまり不正確な情報を出す訳に行かず調べているうちに、私よりよく知っている人がいろいろ書いていらっしゃるようで、たまにあります「読者からの手紙」を読みながら、これを言いたかったんだよと、同意したりしております。最近は頻繁に配信されているようで、大変ご苦労な事だと感謝しております。

 さて今回のネタは私にも身近に感じられる事で、すぐ意見を書く事ができました。半年前まで日本で仕事をしていました折り、感じた事を言わせてもらいます。

 私が就職したのはバブルがピークに達する少し前でした。入社一年目は残業など気にせずほぼ定時で帰宅できました。2年目になると、さすがに業務量も増えてきて経験の浅いものにとって時間内に業務を遂行する事ができなくなり、残業時間が徐々に増えてきました。

 5年目頃バブルがはじけ(急激に受注が落ちて)、就業時間を厳しく管理するようになりました。この頃、時短論議が始まったように思います。就業時間に制限が加えられ、残業時間も規制始められたものですから、それまで納得いくまで仕事していたものとしては、改めて時間の使い方を考えなければなりませんでした。自分なりに無駄な時間を削減し、(私は技術者ですから)実験計画をベッドの中で考えたりしながら、なんとか会社の設備をフルに使えるように工夫しました。その甲斐あって、作業効率が格段に進歩したのですが、時間短縮には何の効果もありませんでした。

 どうして効果が無かったかというと、マンネリズムによる時短の阻止に会ったのです。どういう事かというと、今日は仕事がはかどって、早く終わり定時に帰えろうとすると、呼び止められ他の人の仕事を手伝ってくれといわれました。大義名分には、全員で協力し合おう、という事でしたが、何の工夫も無く今迄通りに時間を気にしないで仕事をしている人の手助けをどうしてしなければならないのでしょうか。また、最近早く帰る私に、製造部門の人達が、最近仕事をしてない、といった言い方をしました。

 技術部門がなにをやっているかよく分らない事もあり、遅くまで仕事をしている人=仕事をやっている人という図式が彼らの頭にはあるのです。時間無制限にやれるなら、私も徹夜でもなんでもしますが、私たちは時間に縛られています。36協定に引っ掛かるぞと脅かされれば、仕事を放棄して帰らなければなりません。

 高度経済成長下で、時間を気にせず仕事ができた人たちは、時間制約がある今の技術者の状況をよく理解できないようです。早く終わると仕事を増やされ、残業ができないのでボランティア残業する人もいます。(ボランティア残業:ホントはどういうのか知りませんが、時間を申告しない為、タイムカードを打ってから残業する事。空残業の反対語)

 また、日本的な組織において、時間を節約するという事は、非常に困難なように思います。雑多な決済を上司に求めなければならないし、客先にFax一つ打つのにも上司の承認印を貰わなければなりません。ただでさえ多忙な上司を捕まえて、内容を説明し、承認印を貰うという作業が非常に時間を使います。決済書類箱に入れておけばなかなか決済されないし、急ぎの場合はやはり直接談判して印を貰わなければなりません。

 こういった事は、日本にいる時は強く感じませんでしたが、アメリカにきて、煩雑な手続きが無くなったので(その分個人の責任はずっと重くなりますが)初めて意識するようになりました。

 労働時間短縮は、法的な制約を設けるだけでは全くザル法にする以外方法はありません。全員がそれを必要と思っていないからです。特に、高度成長世代の人は、遅くまで残っていることが即仕事をやっていることと勘違いしている人が多いと思います。

 伴さんの論調では、労働基準法改正が余り効果が無かった様に感じておられるようですが、バブル世代といわれる私たちの中では、言い換えると時間を気にせず納得いくまで仕事が出来た事を知らない世代の中には、確実に就業時間規制に対する何らかの対応策を持ち始めていると考えます。ひいては、真の時間短縮が実現される下地を形成し始めたと考えます。(Tiger Nishino=South Carolina)


 ●朝8時30分から、午後10時まで仕事
 労働基準法に関するページを拝見致しました。私は中小企業の電子部品製造業に従事しております。毎日、朝8時30分から、午後10時まで仕事をしており、土日曜、祭日も休日出勤が多く、月に2、3日の休日しかありません。会社のリストラで、社員が減る一方、生産量は増えています(生産単価は減額)。週の労働時間が、46時間など完全に無視されております。政府、経営者の行っている「詐欺」の被害者です。 (Shori Mochizuki)
●サービス残業は労働基準法違反
 興味深く読みました。中小企業はもとより日本を代表する大企業の殆ど全てがサービス残業を常態化させ、過労死があとを絶たぬ悲劇が続いています。日本のホワイトカラー生産性はアメリカと比べて極端に低いのですがその大きな理由が「コストがただである」サービス残業にあると考えられます。かつては、生産効率アップの経営努力をするより、従業員のサービス残業に頼るほうがはるかに楽でかつ効果的だったのでしょう。80年代後半から始まったアメリカのPC革命によって、相対的にサービス残業のメリットが小さくなったにも関らず、惰性が続いていると思えてなりません。

 サービス残業を放置した、法定労働時間の議論は無意味です。法定労働時間を決めるより、サービス残業が労働基準法違反であり、厳重に取り締まることによって経営者に残業代全額を支払わせれば、悪名高い日本の長時間労働は直ちに是正されるのでは無いでしょうか。産業界は猛烈に反対するでしょうが、国会が市民を代表するものならば、労働基準法を政府が遵守するべくしっかり監視してほしいものです。(Inoue, Tooru)


 ●労働者の首をしめている
 労働時間や有給休暇、最低賃金これらをなぜ政府が決めなければならないのだろうか。働く人とお金を払う人この単なる二者間の取り決めを、政府がなぜ介入しなければならないのだろうか。今、どんなに不況であっても、この労働基準法に載っている労働者の権利だけが当たり前のように残っている。経済は当然好況と不況の波があるわけだから、好況の折は労働者の条件は売り手市場になり、当然よくなるはずだ。10年ほど前に、ある会社が1年間働いたものには「車を与える」といった話が、報道されていた。

 真偽はどうかわからないが、不況の折は、上記のような基準があれば、この不況だからビジネスを興したいと思っている人--好況の時はとても採算があわなかったので--も当然仕事を手がけない。そうなると不況が永遠につづき、日本は失業者だらけになるであろう。経済行為に規制や基準を設けないで、市場原理を取り入れないと、不況は永遠に続き、結果的には労働者の働くチャンスがなくなる。労働省の皆さんが一生懸命がんばってやろうとしている事が、結局労働者の首をしめている事に気がついてほしい。(黒川一雄)

 ●嫌なら残業をしなければいい
 私はバブル前後に大手のデザイン会社に勤めた経験があります。私のいた当時はまだ残業が出るシステムだったのですが,今は定給制になって,残業代はまったくでないそうです。

 残業が出ない長時間労働者の方がのお嘆きの声がたくさん載ってました。多くの方の意見は取締りを強化して私達の残業代を出してほしい・・・。と言うことに要約されると思います。

 私はこれに対して不思議な感じを受けました。残業がいやなら残業をしなければ良い。この一言に尽きます。まったくなにもわかっていないと思われるかもしれませんが,大体利潤を追求する企業がわに彼らにとって不利な法を守れ,僕達をおうちに帰して,騒いでもたところでい方ないと思いませんか?彼らには彼らなりの法律を破っても利益を追求したい性質があるのです。自分の健康を過労死から守りたいのなら,残業をせずにうちに帰れば良いのです。それでも終わらない仕事はもしかしたら工夫次第で能率が上がるかもしれません。また工夫しても変わらないかもしれません。

 まるで日本の企業やお役所は詐欺だみたいなことを行ってますが,定給制はアメリカの企業はオフィスワークのフィールドでは一般的だし,私の友人の多くは何時間も残業してもしなくても毎月同じ給料をもらっています。それでは彼らはその状態に不満ならどうするか?転職するのです。

 日本は資本主義社会です。あたかもチームワークを大切にし,みんなの「輪」を大切にしているなんて言っているのはそのほうが企業にとって都合が良いからです。でも結局は利益が私達の「輪」をコントロールしているだけです。生産性の低い職員、とりわけ企業にとってのコスト性の低いと言われる女性は職場の清算向上力を高める価値が低まると退職を勧められ,抹消されていきます。良いじゃないですか。無能でだらだら残業するだけが能のあなた達でも男性と言うだけでとりあえず職場に残れる。そして役所に残業を取り締まれと騒ぐ。子供が幼稚園の先生に一歳年上の餓鬼大将がおもちゃを取ったから怒ってやってくれと言ってるようなものです。

 いやなら残業をしなきゃ良い。いづらいからやめるとか情けないことを言ってないでしぶとく職場に居座れば良い。そういう個人の態度がサービス残業をなくし生産性をあげ,自分の健康を守り企業からの搾取を押さえることのつながるのではないでしょうか?(Mitsuko)

トップへ 前のレポート



© 1998 HAB Research & Brothers. All rights reserved.