アジアは超インフレなのに日本で輸入インフレが起きない理由1998年04月08日(水)萬晩報主宰 伴 武澄 |
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●日本車より安く売れるチャンスを逃した輸入ディーラー
お決まりの抗議がいくつかあった。メルセデスの長野県のあるディーラーは「共同通信社を告訴する」と息巻いた。当時、欧米車の並行輸入が流行っていた。ボルボなどの並行輸入車は日本の代理店価格より150-200万円安かった。それでももうかっていたのだから、筆者の記事は正しいという自信はあった。 日本フォードの鈴木弘然社長が唯一「いい記事だ」と間接的に誉めてくれたそうだ。ただ「フォード車以外は正しい」との注釈付きだった。誉めてもらったが「マスタングを249万円に値下げしたっていうが、アメリカではオートマとエアコン付きで2万ドル((当時の1ドル=90円換算で180万円)しかしないじゃない」と反論した。 ●輸入車は高すぎるという"情報広告"を掲載したフォード
「ゴルフ3ドアはアメリカで1万3150ドル(当時の1ドル=90円換算で120万円)で売っている。日本では5ドアだが264万円だ。オートマ、エアコン、カセット、ABSなどを装備しても1万6445ドル(どう150万円)にしかならないのにですよ。約100万円の使途不明金があるんです。欧州の大衆車の日米価格差はみんな100万円もある」 「あまりにも日本人をばかにした売り方です。いくら日本人が輸入車は高くないとありがたがらない人種だからといってもひどい。企業の価格政策は別にあるべきでしょう。輸入大衆車は年間10万台を超えているから、日本人は価格差分の1000億円を搾取されている勘定になる」 「ゴルフの価格をフォードの」広告に載せたのは"情報広告"というんですか。輸入車ディーラーももっと真面目に日本で売る努力をしなければならないのに、日本のマスコミはその役割を果たしていない。日本人ユーザーに考えるきっかけをつくりたかった。マスコミに視点がないからわれわれがあえてやっただけです」 当然ながら筆者が書いたインタビュー記事では鈴木社長の明快な主張に拍手を送った。鈴木社長は、アメリカでカローラより安く売っても年間に「1万6800台」しか売れていないゴルフが日本でカローラより100万円も高いことに我慢ができなかったのである。 ●円高時に法外の利ざやを取った欧米企業
このことは乗用車に限った話ではない。輸入商社または欧米のメーカーは当時、日本市場で暴利をむさぼっていたことになる。いま、輸入車が売れないのは不景気だけのせいではない。もちろん円安のせいでもない。日本車より安く売れるチャンスに市場シェアを取っておかなかったつけが巡り巡っているのだ。 当時、輸入品が正当な価格で売っていれば、輸入が急増して1ドル=80円台という超円高はなかっただろうし、その反動の円安もなかったかもしれない。日本の不幸は、消費者もマスコミも騙されたことまだ気付いていないことだ。 |
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