18日からの通常国会の争点はガソリンなどにかかっている暫定税率である。3月31日までに租税特別措置法改正案(租特法)が国会を通らないと、5年間と区切って延長されていた高い税率が3月末で日切れとなり、翌4月1日から揮発油税法などで決められた“本則”の税率に自動的に戻ることになっている。
これまでこの「日切れ法案」は「国民の生活に密接にかかわる」として与野党の政策論争になったことはほとんどなかったが、今回は民主党が暫定税率に焦点を絞って論戦を挑むことを表明しているからである。
具体的にいうと揮発油税法で定められたガソリン税(揮発油税+地方道路税)は1リットルあたり28.7円。それが租特法によって「当分の間」53.8円になっている。民主党が「四月からガソリンが25円安くなります」といっているのはその差額のことである。法案成立がただの1日でも4月にずれ込むと、その日は本則の税金しかとれない。
通常国会での一番の仕事は2008年度予算の成立。これも3月末までに成立しないと別途暫定予算を組まなければならないからけっこう大変なことになる。しかし租特法が通らないと世の中もっとややこしいことになる。期限切れが来るのはガソリン税だけではない。住宅取得のかかわる多くの減税措置なども「租特法」改正として一括法案になっているからである。
萬晩報は発足当初からこの「暫定」という概念や「租税特別措置法」そのものに対して問題を提起してきた。この暫定税率がなぜいかがわしいか。いくつか例を上げたい。
第一に暫定の期間が長すぎる。最初にガソリン税などに暫定税率が導入されたのは昭和49年。1974年のことである。石油ショックにより道路財源が確保できないことから当初2年だけ多く負担してくださいというのが趣旨だった。それが3年、5年の延長、延長でここまでやってきた。
筆者が就職したのが77年であるから、暫定期間が34年にも及んだことになる。30年以上にもわたり“暫定”はないないだろう。
この問題は筆者が記者だった時代から記事を書いてきたが、当時でさえ「15年もの暫定はないだろう」と問題提起した。しかし“暫定”問題に関心を示していたのは石油業界だけであった。本当に必要な税率だとするならば本則を改正すればいいことである。そんなに難しいこととも思えない。
第二に暫定税率が高すぎることがある。ここ数年ガソリンそのものが高騰しているが、長い間、製品価格に対して100%以上の課税が続いていたのである。こんな税率はタバコしかない。
第三は自動車関連だけに暫定税率がかけられていることである。ガソリン税、軽油取引税、自動車重量税などである。30年前なら自動車は“贅沢品”の一つとして重課税があってもおかしくない。だが、自動車を持つことが富の象徴でもなんでもなくなった時代になっても自動車に重課税することは税の公平性からみておかしい。国際的にみて自動車オーナーにこんなに税負担がある国はないはずだ。本則を改正しようとすると必ずこういった議論が起きるから政府はなんとか暫定措置の延長で税収減をかわしたいのだと考えざるを得ない。
第四におかしいのは自動車関連の税金が道路特定財源となっていることである。自動車に乗る人たちが道路建設の負担をするのは当然のことと思われた時代もあった。しかし、発想は昭和20年代のものである。田中角栄議員が同29年に議員立法で成立させた法律である。当時は、高速道路などはなく、国道1号線でさえ、十分に舗装されていなかったのだから悪くない発想だったに違いない。ちなみに高速道路を有料にしたのも田中角栄氏だった。
全国に道路を整備することはまさに地方への公共事業予算の確保にほかならなかった。連想ゲームのように「暫定税率」は「道路特定財源」という自民党の政権維持のための資金源へとつながる。これを断ち切るのが改革でなくてなんであろう。
政府・与党にとって暫定税率が日切れとなるのは悪夢であろう。しかし、たとえ1日であってもガソリン税が本則に戻ることは国民にとって大きなショック療法となる。暫定税率といういかがわしい制度がこれほどまで続いてきた意味について考えるきっかけになるだろうからだ。
筆者のかねてからの主張は、国の施策から「臨時」「暫定」「特定」をなくそうというものである。きょうの日本経済新聞に旧特定郵便局長で構成する「全国特定郵便局長会」(全特)の組織名から「特定」の文字を外すことが決まったと報じていた。
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