「プラグイン・ハイブリッドという新発想」から話題を再び電気自動車(EV)に戻そう。
■究極のEVはスーパーカー
日本では数年前に慶応大学が「エリーカ」という8輪駆動の電気自動車を開発したことが話題になった。8輪それぞれにモーターを埋め込みコンピューターで自動制御するこの車の特徴は省エネではない。ポルシェをもしのぐ圧倒的加速力と最高速度である。
ニュートンが発見した万有引力は物質が落下する加速度を1Gとしているが、エリーカのそれは0.8G。リンゴが落下する加速度つまり引力に限りなく近い加速度を実現したという。
しかも燃費が半端でない。100円の電気で100キロの走行が可能であるから、東京から大阪まで500円で行けることになる。もっとも1回の充電でまだ500キロは走れない。
電気自動車を自動車の性能面から売り出す新発想でもある。以前にも書いたが、モーターのエネルギー変換率はガソリンエンジンの2倍もあり、気圧や空気の濃度など走行環境に影響されにくい。エリーカは環境重視から生まれたというよりスーパーカーとして生まれた。性能を極めたところに環境問題をクリアする技術に出会ったということになる。
■ITの成功者たちが開発したTesla
カリフォルニアの最近の話題は来秋発売予定の電気自動車Teslaではないだろうか。アメリカ全体で殺してしまったGMのEV1をさらに進化させたのは自動車会社ではなかった。Tesla
Motorを立ち上げに参画したのはGoogleやeBay、PayPalの創業者などシリコンバレーを拠点として活躍する人々だった。
Telsaはリチウムイオン・バッテリーと240馬力に匹敵する182キロワットAC(交流)モーターを装備したこのスポーツカー。約3時間半の充電で400キロの走行が可能で、時速100キロまでの加速性能は4秒という性能を持ち、電動自動車としては世界初の本格的スポーツカーとなる。
Teslaはエリーカ同様、実はスーパーカーなのだ。まず価格が10万ドルだから新車のポルシェが買える価格帯である。ポルシェのオーナーはほとんどがステイタスとしてポルシェを購入する。一部背伸びしている自動車好きもいるが並みの収入でポルシェを維持することは不可能である。
日本のエリーカも近く市販車としてデビューする予定だが価格は3000万円と予想されている。これは高すぎる。ロールスロイス並みでは公道を走るのは難しそうだ。しかしTeslaの10万ドルは何万台で売れる価格帯だ。
高額所得者に満足してもらえる性能を電気自動車に求めたのがTeslaなのだ。そう考えると分かりやすい。この発想の転換は興味深い結果をもたらすかもしれない。
というのも、Teslaは7月20日にモデルを発表。カリフォルニアをアリゾナなど地域限定で予約を受け付けていたが、2007年モデルはすでに“sold out”してしまったからだ。日本からは買えないが、カリフォルニアで購入した業者が日本に持ち込むことは間違いない。運が良ければ来秋、Telsaの雄姿を日本の公道で目にすることができるかもしれない。
ちなみにテスラは約150年前に交流を発明した人の名前。電球を発明したのはエジソンだが、発電所から家庭までの送電を可能にしたのは交流のおかげなのである。グーグルの創業者ラリー・ペイジが相当のテスラファンで知られるそうだ。電気自動車の普及をテスラの名前に託したということも記しておきたい。
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