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いかがわしいPSE法は即刻廃止すべきだ

2006年03月21日(火)
萬晩報主宰 伴 武澄
 8年前の1998年3月に「生きていたSGマークという亡霊」というコラムを書いたことがある。PL法(製造物責任法)が生まれて3年も経っているのにまだ通産省認定のSGマーク製品が存在しているだけでなく、対象商品を増やしているのはけしからんという内容のコラムだった。「PL法の施行により、消費者は製品事故に対して直接メーカーを訴えられるようになり、政府の庇護はもはや必要ない」と喝破したつもりだった。

 中古家電製品が4月から流通できなくなるという「PSE法」の導入騒動でそのコラムを思い出し、PSE法もまた経産省の策謀ではないかと考えた。

 SGマークはsafty goodsの略。通産大臣の承認事項だったものが、2000年からは検査機関である財団法人製品安全協会の独自の安全基準となっている。この点ではいくらか進歩があったのだろうが、PSE騒動では、安全を国が守るという旧来の発想に逆行したのではないかと考え始めている。

 安心、安全という概念は21世紀の政治の新たなキーワードとなった。大地震への不安や大津波といった自然災害だけでなく、JR西日本の列車事故、マンションの耐震基準問題など身近に国民の安心、安全を揺るがす事件事故が相次いでいる。金融機関の破たんもまた国民生活を不安にさせる原因ともなっていた。

 人間が安心、安全で暮らせる環境は当然ながら国民が望むものではあるが、国や自治体はどこまで市民の安心、安全に対して責任があるのか。どこまでコストをかけたらいいのかという点では国民的合意があるとは思えない。

 住んでいるマンションに対して「震度5の地震で崩壊の危険がある」といわれたら誰だってぞっとする。民間が建てるマンションやビルに対してある程度の耐震基準を設けるのは当然と思うかもしれない。高額商品であるだけに一度建てたらなかなか建て直しなどできるものではないからなおさらである。

 しかし、小泉内閣が目指すものは自己責任だったのではないか。何から何まで国や自治体に依存する高コスト社会を改善しようとするのが自己責任だったはずだ。都市計画や防災といった公的なものならいざしらず、個々の家電製品の安全性にまでいちいち国家の責任は問われないのではないかと思う。

 電気用品安全法(PSE法)などというものが2001年4月1日に施行されていたことは筆者も知らなかった。「漏電・火災・感電などの事故防止と 粗悪品を排除してきちんとした電源部品で運用管理する」という目的で制定された。いわば家電製品の「車検」のようなものである。車検のように2年ごとの検査はないが、PSEマークのない家電製品は出荷できないのである。

 笑ってしまうのは、この法律が規制するのは「電源コード「ヒューズ」「ソケット」「スイッチ」「変圧器」「電熱器」の類が安全であるかどうかという点である。決して家電製品の品質保証ではないのである。

 考えれば考えるほどPSE法は時代錯誤の法律である。

 メディア業界にいてこの法律の施行を覚えていないのは何とも情けない話であるが、家電業界がこの法律の導入にどれほど抵抗したのだろうか。これも記憶にない。家電製品が火を噴くなど不安を持つ消費者がいま時どれほどあろうか。日本の家電製品への信頼性は世界一であることは誰もが求めるところであろう。その日本の家電製品を官僚が「検査」して「合格」のシールを貼るなどということはほとんどパロディーである。

 仮にどうしても「検査」したいというのであれば、経産省自らが検査すればいい。外郭団体に検査を委託するなら、SGマークのように「任意」の安全基準にするべきであろう。ちなみに車検は民間車検場もないことはないが、国交省が車検場を各県に設けている。

 PSE法の認定機関は経産省の外郭団体である財団法人電気安全環境研究所(JET)である。1997年にJETと改称した。元々は1963年に設立された財団法人日本電気協会電気用品試験所としてスタートした。通産省工業技術院の電気試験所から安全試験の業務が移管された。電気用品取締法に基づく指定試験機関だった。

 まだ日本の家電製品は安かろう悪かろうの時代を脱し切れていなかった。ということで同電気用品試験所の試験に合格した製品に〒マークが表示された。その後、この〒マークは政府の許可が必要な「甲種 」と企業が安全性を自己確認すればいい「乙種 」に分けられ、1995年にはほとんどの家電製品が「乙種」になり、乙種マークも廃止となったという経緯があった。(代わりにSマークが登場したが任意の制度)

 PSE法がいかがわしいのは、この法律が導入される際の説明として「さまざまな経緯をたどりながら、平成13年4月の法改正で、規制の哲学も事前規制から事後規制に変わり、法律の名称も「電気用品取締法」から「電気用品安全法」に改称された」としながら、再び「甲種」と「乙種」マークの義務づけを復活させたことだ。甲種は◇の中にPSE,乙種は○の中にPSFの文字が表示されている。

 現在、PSE法は「4月から中古家電製品が店舗販売できなくなる」と問題が矮小化されている。そもそも過去の日本の家電製品には「電気用品取締法」に基づいた「甲種」「乙種」マークが付いているのである。家にある家電製品の裏をご覧になるといい。乙種であっても一応、国家の認証を経ているのである。その過去の認証を否定するような法律はどう考えてもおかしい。

 マンションやビルの建築基準は年を経るごとにハードルが高くなっているが、古い基準のマンションやビルの販売を禁止する法律はない。いかがわしいPSE法は即刻廃止すべきだ。

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