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地球環境と葵

2005年10月10日(月)
アメリカン大学 客員研究員 中野 有
 ワシントンで京都という言葉が頻繁に登場する。地球環境問題を問いかける京都議定書を支持しなかったブッシュ政権と米国南部を襲った巨大ハリケーンの予想外の被害は関係ないとしても、米国民は地球環境問題の重要性に目覚めたようである。

 ジョージタウンを子犬(プードル)を連れて歩いているとよく声をかけられる。子犬に話しかけられるのだが、「どこから来たの」の返事に京都からというと、かなりの確率で地球環境問題に行き着く。今や京都のイメージは、地球環境問題と日本文化である。

 その故郷、京都に帰った時、毎朝、上賀茂神社と下賀茂神社に行き、神社の清清しさに触れ、自然と調和するのが楽しみである。アフリカに4年、ヨーロッパに5年、アメリカに4年住み世界を観てきたが、この自然の雅は、世界にないと感じる。子供のときに感じた賀茂社の空気を今も同じように感じる。あの懐かしい空間が世界でも稀なる自然でその環境で育ったことをうれしく思う。

 賀茂神社で藤原家隆が詠んだ「風そよぐ ならの小川の夕暮れは みそぎそ夏のしるしなりける」。このならの小川のせせらぎに触れながら、ふと昔は、葵が茂っていたのだろうと想像してみた。絶滅しかけたホタルやメダカを守り増やす活動が盛んなように賀茂社の神紋の葵の草が、清い川に映えるプロジェクトが生まれれば素晴らしい。いかにも東洋的な京都を象徴する葵が地球環境問題のメッセージとして重要な意味を持っているような予感がしてならない。

 徳川将軍のシンボルである三つ葉葵は、賀茂神社の神紋であるフタバ葵に由来する。葵はワサビ科の植物で美しい川辺に群生する。みずみずしい生命力の象徴が葵であり、賀茂社や徳川家のご紋になったのも自然環境に関係している。

 下賀茂神社は崇神天皇、二千年以上前に神社の端垣の修造が行われたのとの記録が残っている。上賀茂神社は、678年、天武天皇の御代に社殿の基が造営された雷の神である。毎朝、千年以上もかかさず五穀豊穣、世界平和のお祈りがされているとの説明を、神殿で聞いた。今年4月から、神殿でのご祈祷に一般も3千円で参加できる。約3時間かけ神官から説明を受けたのだが、本当に勉強になった。まだ一般に知られてないようで、3人だけの参加となった。読者の皆様が京都に行かれる機会があれば、是非、上賀茂神社の朝のご祈祷に参加されることをお勧めする。

 11月にブッシュ大統領が京都を訪れる。アメリカはハリケーンで前代未聞の被害を被った。今年は自然災害の中り年である。天地風雨の自然の神がある京都にブッシュ大統領が訪れることによりアメリカの厄除けになることを切に願う。そして京都のイメージが地球環境問題の基軸となり、ブッシュ大統領が地球環境問題に真剣に取り組むことを希望する。

 加えて、葵が身近に見られるようなすがすがしい自然環境が復活するようなプロジェクトが始まれば素晴らしいと考える。大政奉還は、天皇と徳川の両者が主役であり、そのシナリオを描いたのが坂本竜馬であった。天皇家も徳川家も大切にした葵には、日本のみならず世界に伝えるだけの重要なメッセージが秘められているような気がしてならない。こんな話を、萬伴報の伴さんと竜馬ゆかりの地、京都の清水の明保野亭で行った。

 中野さんにメールは mailto:tomokontomoko@msn.com

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