小泉自民党への支持を打ち出した萬晩報に対して「マスコミは平等でなければならない」とのおしかりメールを何通かもらった。萬晩報はそもそも個人が運営するサイトでマスコミではないことをまずもって言いたい。問題はマスコミである。
なぜアメリカの新聞のように支持政党を鮮明に打ち出さないのかという疑問が昔からあった。たとえば今回の選挙で朝日が岡田民主党を支持し、読売が小泉自民党を支持するという構図が生まれれば、紙面は応援合戦となるから俄然盛り上がる。有権者にとっても争点がより分かりやすくなる。
選挙がおもしろくなることに不満の読者も少なくないと思う。昨年の参院選で「萬晩報始まって以来のつまらない選挙だ」というコラムを書いた時も「つまらないとは何事か」という叱責をもらったが、選挙がおもしろいのは役者(候補者)がそろっていて、争点が際立っている証拠でもある。さらにいえば応援団が盛り上がることである。
日本の選挙が概しておもしろくなかったのは、まず役者が悪かったことである。ポスターを眺めても投票したい人物がいなかった。各党の主張も外交から景気にいたるまで耳障りのいいことばかりが総花式に並んでいて政党や候補者の名前を入れ替えてもほとんど見分けが付かないほど違いがなかった。
今回の総選挙がおもしろいのは、小泉自民党と岡田民主党というリーダーが全面に出てほとんど首相公選の様相を呈していること。加えて「郵政民営化」という争点が明確であるからである。野党からは「郵政民営化一本やりでいいのか」という批判もないこともないが、当初「年金と子育て」を争点としようとした岡田民主党も半分は「郵政民営化」の土俵に登らざるをえなくなっている。
この明確な対立軸に大手新聞がそれぞれの陣営の応援団としてのっかれば、さらに盛り上がり、新聞の売り上げも倍増したはずなのだと思っている。
大手新聞が旗幟を鮮明にしない理由がいくつかある。まずは多くの新聞社が綱領で「不偏不党」をうたっているからである。片方の政策を応援できないとなると、「○○ではあるが、一方で××でもある」という読者からすればどちらが正しいのか分からない記事が乱立することになる。
参院で郵政民営化法案の採決があった前後の毎日新聞と日本経済新聞は一面に郵政民営化を支持する“論説”を掲載した。おー日本のメディアもようやく旗幟を鮮明にする時代に突入したかという思いにふけったが、解散が決まり、選挙戦に入ると毎日も日経も是々非々の紙面に戻り残念な思いをしている。
郵政民営化はまだ改革の入口に過ぎない。星野仙一氏も阪神に残るという意思表示をした。野球と同様、盛り上がりには役者が不可欠で応援団も必要なのである。
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