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時間外取引を先にやったのはフジテレビ

2005年03月09日(水)
萬晩報主宰 伴 武澄
 ニッポン放送株をめぐるライブドアとフジテレビジョンの争奪戦は8日、フジテレビが提示していた公開買い付け(TOB)で発行済み株式の36・47%を確保したことで新たな段階に入った。

 ライブドア側はすでにその45%超を取得済みであることから、発行株式の80%超が2社によって支配されたことになる。上場廃止は確実である。ニッポン放送の東証二部上場は1996年である。たった10年で株式の自由な売買ができなくなるニッポン放送の一般株主の権利はどうなるのであろうか。

 ネットをサーフィンしていたら興味深いブログに出合った。isologue-by 磯崎哲也事務所 http://tez.com/blog/archives/000324.html

 そもそもニッポン放送は、当時日経連の専務理事だった鹿内信隆氏が1953年に設立したラジオ放送局である。鹿内氏は昭和20年代に多発した労働争議を鎮めた「功労者」として財界内で絶大な信頼感を勝ち得ていた。フジテレビはその4年後にそのニッポン放送と文化放送がつくったテレビ局である。ラジオ局が巨大なテレビ局の株式を支配するようになったいびつな構造はほぼ50年前につくられた。

 そしてそのフジテレビの収益力によってたかだか1000億円規模の連結売上高でありながら1500億円もの剰余金を持つ超優良企業なのである。簡単に言えば1000億円を投じて買収してもおいしい会社ともいえる。いままでM&Aの対象にならなかったことすら不思議な感じがする。

 ともあれ磯崎ブログである。

 ニッポン放送は昨年春、村上ファンドによるニッポン放送株買い増しに対抗して、フジテレビの株式の持ち株比率を32・3%から22・5%に落とすという奇妙な行動に出ていた。なんのことはない。持ち株比率を25%以下にすることでフジテレビのニッポン放送に対する議決権を行使できるようにしたのである。

 次いで9月、こんどはフジテレビがニッポン放送の株式を買い増して持ち株比率を0・03%から12・4%にしていた。この株買い増しを報じた日経産業新聞には次のように書かれているという。
「フジテレビジョンは10日、自社の筆頭株主であるニッポン放送の株式405万株を取得したと発表した。ニッポン放送の発行済み株式数の12・4%に相当し、村上世彰氏が出資する投資会社の16・6%に次ぐ第二位の株主となる。フジテレビはニッポン放送への出資比率を高めて発言力を強め、グループ経営基盤の強化を狙う。
 フジテレビは同日の立ち会い外取引でみずほコーポレート銀行など国内銀行五行からニッポン放株を取得。200億円強の取得代金は手元資金でまかなった。これにより持ち株比率は0・03%から12・4%(議決権の比率は13・6%)へと大幅に上昇した。
 ニッポン放送はフジテレビの筆頭株主。春先にフジテレビ株の一部を売却するなどした結果、出資比率は32・3%から22・5%に低下した。商法上の規定により、ニッポン放送の出資比率が25%以下に低下したことで、フジテレビはニッポン放送に対して議決権を行使できるようになったため、資本関係の強化に踏み切った。」
 立ち会い外取引とは「時間外取引」のことである。「著しく透明性・公平性を欠く取引で、違法の疑いもある」とライブドアのよる時間外取引を批判しているフジテレビはその半年前に同じことをしていたのだ。しかも資本的に「親」であるニッポン放送株を買い増していたのだから、いびつな関係を一層いびつにさせていたことになる。本来はその時点でTOBを宣言して親子の逆転現象を解消する計画を世に問うべきだったはずのだ。

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