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構築したい世界に通用するシンクタンク

2002年07月12日(金)
東西センター北東アジア経済フォーラム上級研究員 中野 有


 日本には「シンクタンク」が存在しないと云う人がいると思えば、財務省等の頭脳集団が日本のシンクタンクだと考える人もいる。そのエリート集団が日本の発展に向けた方向性を誤ったのだから、いずれにせよ日本には世界に通用するシンクタンクはないのであろう。

 では、いったいシンクタンクとは、何なのであろうか。広辞苑によると「頭脳を資本として商売をする企業や研究所。多くの複合的な技術やシステム開発を対象とし、政策や企業戦略の策定を行う」とある。この広辞苑の解釈によると「コンサルタント」に近いように思われてならない。

 日本の仕事の領域ではシンクタンクという機能は、どうも理解しにくい。なぜなら日本では、アイデアとか発想が商売としての価値を生み出しにくいからである。商売として利益を追求すれば大局的なビジョンは生まれない。どうしても大きな構想が実現するまでに時間を要するのであり、日本のシステムではシンクタンクが生まれる土壌が限定される。

 一方、アメリカでは、2大政党制の影響も有り、政権が交代する毎に政官財学が流動的に変化する。そこで、政官財学を結ぶ活動やそれらを統合しビジョンを作成する活動が重宝されるのである。政官財学のどこでも縄張りが存在するがそれらを超越したところに新たなるビジョンが生まれるのだろう。

 シンクタンクには多くの解釈もあろうが、要するに新鮮でかつ柔軟な夢のある構想を描き、それを実行するためのシナリオを描き、そして政官財学のネットワークを通じ実現するための汗をかくことである。もし、このようなシンクタンクが日本に存在していれば、小泉総理の「聖域なき構造改革」においても、5年10年先の夢のある日本の在るべき姿が描かれ、更に明確な設計図が描かれることにより日本に元気が涌き出てくるのではないだろうか。

 夢があれば改革の痛みも試練として乗り越えられそれが次なるチャンスに結びついていくのだろう。郵政の民営化や特殊法人の問題も重要だろうが、明るい未来のある日本に導くための設計図の作成が喫緊の課題だと思う。

 アメリカが双子の赤字で苦しんでいた80年代、アメリカは日本式経営を研究し、それが90年代のアメリカの発展に少しは貢献した。現在の日本はアメリカのシンクタンクから多くのことを学ぶべきだろう。

 多くの日本の専門家は、経済、外交・安全保障どれをとってもアメリカの影響で左右されると云う。そのように受身的な評論を行うのだったらアメリカの中枢のシンクタンクに乗り込みそこで堂々と議論をし、アメリカのシンクタンクから多くのことを学ぶことにより日本の国益につながっていくのではないだろうか。

 アメリカのシンクタンクが万能薬を持っているとは考えられないが、日本の優れた分野と欧米や世界各国の優れた分野を融合させるという発想も重要だ。

 日韓共催のワールドカップで、日本のサポーターのおおらかな態度が世界に高く評価された。恐らく世界で稀なる日本の優れたところは、闘争心より「柔能く剛を制す」というおおらかさである。

 9月からワシントンのシンクタンクで勤務することになった。そこでアメリカのシンクタンクで学ぶと同時に、日本の排他的でない「和の精神」を伝播したいと考えている。いつか日本に世界に通用するシンクタンクを創るという夢を実現したい。

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