14日、ウォールマートがスーパーの西友とが包括提携したと発表した。提携内容はウォールマート側が5月に西友の発行株式の6.1%を取得し、今年末に33.4%、最終的に2007年末に66.7%の株式を取得する権利が与えられた。
西友のリストラの進捗具合をみながら、徐々に経営支配しようという、なんとも都合のいい「買収契約である」。西友の木内政雄社長は会見で「再編のうねりを勝ち残っていくためにも新たなパートナーが必要だった」と語っているが、冒頭から論理矛盾をきたしている。株式の半数以上を取得する相手はパートナーではない。
乗っ取られるなら最初から城を明渡せばいい。日産自動車も三菱自動車も提携当時「パートナー」と呼んでいた相手側が株式を買い増して、経営権を支配した。
一方で不安なのは、日本企業同士の提携ならともかく、3年後に株式の過半を握って、5年後に三分の二を牛耳るという提携内容は時間がかかりすぎて、どうもアメリカ的でない点である。ウォールマートがどれほど本気で西友にてこ入れする意欲があるのかどうか疑わしい。
ウォールマートは昨年破たんしたマイカルの受け皿として日本進出を図るのではないかとうわさされたこともあるが、なんとも「ぶなん」な相手と手を握ったものだ。
おもちゃのトイズらスが日本市場で成功したのは、藤田田という日本人離れした発想を持つ個人事業主と手を結んだからだと思っている。日本的商慣行に疑問を抱きながらも、マクドナルド・チェーンを日本に定着させた人物である。ある意味ではアメリカ的DNAをもった数少ない日本人経営者でもある。
トイズらスが提携先に求めたのは、チェーンストアの経営ということだけで、業種を問わなかった。成功の秘訣はそんなところにもあるのだと思う。
ひるがえって、西友は日本の大規模メガストア展開に乗り遅れたスーパーのひとつである。90年代半ばに西洋環境という関連会社のバブル処理で早くからリストラを余儀なくされた。幸か不幸かこの業界の体力を消耗させた大規模出店競争から取り残された。欠点がない分、特徴もない。
特徴といえば、かつての流通業界には独自の哲学を持った経営者が多くいた。戦後、スーパーというアメリカ生まれの販売形態を導入し、それぞれにメッセージ性を持っていた。また価格競争を持ち込んだという点で百貨店など既存の業態に対抗する気概もあった。ドラマ「おしん」のモデルとなった和田一夫氏は静岡県の八百屋からスーパーに進出。旧ヤオハンを東南アジアで成功させたたけでなく、本社を香港に移転させた後に上海一番乗りを果たすなど海外でも日本男児の心意気を示した。
西友を育てた堤清二氏は西武百貨店から金融、ホテル、リゾートなどを含むセゾン・グループという流通帝国をつくりあげた。西友はリストラの後にセゾンを離れ、住友商事の傘下に入った。「ぶなん」といったのはそういうことで、西友はもはや、なんのへんてつもないスーパーに成り下がった。
今後、ウォールマートが日本で一定のシェアをとるには、自力で大型店を出店させることが不可欠。日本で新たに土地を取得してまで出店するには相当のコストが求められる。その分野で経験の少ない西友と手を結んだことが果して理にかなうのかどうか、いささか不透明である。
日本的商慣行に問題提起してきた流通業界の経営者といえば、ライフコーポレーションの清水信次氏を思い浮かべる。ウォールマートの提携先として最も最適な人物だと考えていたのだが、惜しいことをした。これは感想である。
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