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21世紀の国際機構・アジア経済社会開発機構の設立を
2001年12月08日(土)
東西センター北東アジア経済フォーラム上級研究員 中野 有

 米国国務省、国連、世銀、米国のシンクタンク(ブルッキングス、CSIS、東西センター等)を訪問し、北東アジアの開発について意見交換する機会を得た。

 米国政府は、9.11の同時テロの影響で米国の外交政策が変化したことを認めることはないとしても、米国の東アジア戦略が大きく変化する可能性があると感じた。米国単独では解決できないテロ等の21世紀型問題に対し、軍事的安全保障のみならず、経済・社会・エネルギー等の安全保障を総合的に捉える重要性が模索されている。

 また、世界最大の人口を有し、急激に経済的・軍事的パワーをつける中国を戦略的競合国として位置付け、歴史的に見て中国の再登場に対する高度な戦略が練られている。概して、米国の東アジア政策は、日米同盟を基軸、アジア市場を考慮に入れた米中関係の強化、東アジアに多国間協力メカニズム構築の3点であると考えられる。

 日中韓のトライアングルが中心となる北東アジアは、3つの大きな問題に取り組む必要がある。第1に戦争・冷戦の負の遺産が残存する北東アジアの途上地域(旧満州、北朝鮮、モンゴル、極東ロシア)の開発のためのインフラ整備、第2は1997年の東アジア通貨危機の教訓を生かしたアジアによる金融システムの構築、第3は朝鮮半島の安定に向けた経済社会機能の強化にある。

 これらの3つの問題に対応する新たな国際機構、すなわち「アジア経済社会開発機構」を日中韓が中心となり、設立すべきである。日中韓が対等にこれらの活動を分担し、各国の特性を生かしながら中国に北東アジアのインフラ開発機能、日本に金融のメカニズムの機能、そして韓国に朝鮮半島の安定に向けた経済社会機能の3つのウィンドウを設ける。

 ブレトンウッズ体制の下で、世銀やIMF等の機能と同様に、市場経済やグローバリゼーションという流れに逆らわず、アジア的な価値を生かした「アジア経済社会開発機構」の下で、日中韓の連携の上経済圏構築のための司令塔を有する。このような東アジアの多国間協力や経済協力を主眼とした協調的安全保障のメカニズムの青写真を描くにあたり、現時点ほどこの実現性が高い時期はないのではないだろうか。

 数年前、日本はAMF構想等を推進させようとしたが、米国・中国は難色を示した。しかし、今回の米国のシンクタンクを中心に「アジア経済社会開発機構」設立のアイデアについて意見を聴取したところ、9.11以降の米国や世界の多国間重視の変化により、国際機構をアジアに設立するのは夢ではないとの感触を得た。

 その前提条件として、日本が北東アジアの多国間協力を推進しながら、米国と密に協議を進めることにある。この構想を推進することで、ひいては東南・南西アジア等を包括する「アジア機構」に発展するだろう。10年後、20年後を考えれば、日本のイニシエティブの下で中国や韓国とトライアングルの国際機構を有することが、大いなる国益と地球益につながると考えられる。

 アジアには、マニラのアジア開発銀行、バンコックのESCAP、東京の国連大学等の国連機構しか存在しない。先進国の条件として、所得1万ドルを達成しOECDに入ること、そしてオリンピック、万博開催そして国際機構の誘致だと言われている。そう考えるとアジアに21世紀型の問題に対処する国際機構を作る、それも日中韓が協力しアジアの社会的なファクターを含む国際機構の設立は実現されなければいけないだろう。

 中野さんにメールは tonakano@csr.gr.jp


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