■カリフォルニア電力危機
昨年12月26日午後、グリーンスパン米連邦準備理事会(FRB)議長は、ワシントンを訪問中のデービス・カリフォルニア州知事と会談する。この時、卸売電力価格の高騰で経営が悪化しているカリフォルニア州の最大手電力会社パシフィック・ガス・アンド・エレクトリック(本社サンフランシスコ)と同2位のサザン・カリフォルニア・エジソンの2社の状況について意見交換を行う。
異例の早さで会談が実現したため、ただならぬ気配を感じていたが、情報技術(IT)の最先端を走る同州の中部、北部で計画停電が発生した。
ブッシュ大統領は1月18日、CNNなどのインタビューで、カリフォルニア州の電力危機に関連して、同州の自由化政策に「欠陥がある」との見方を示した。ただ、自由化そのものは否定せず、高騰を続ける電力卸売価格に上限を求めてほしいとする電力会社の要請については「問題解決にならない」と否定的な考えを明らかにした。
ブッシュ氏はさらに、「環境規制などのために発電能力を最大にできないのも問題だ」と述べ、厳しい大気汚染規制などにも電力不足の原因があるとの見方を表明し、同州では発電所の建設とともに、燃料を発電所に送るための「パイプラインも必要だ」と語る。エネルギー問題全般に関連して、アラスカの自然保護地域での石油や天然ガス掘削にも改めて意欲を見せた。「政府が所有するすべての土地を調べ(掘削の是非などを)検討する」としている。
ちょうど同じ頃、米国の民間シンクタンク、ワールドウォッチ研究所は2001年版の地球環境白書を発表し、21世紀に入って地球環境は「危険な岐路」に差し掛かっていると警告し温暖化防止などで日米など主要国に一層の努力を迫った。
「2001年世界の状況」と題した白書は、世界の環境破壊が加速度的に進んでいる半面、環境問題に取り組む政治的弾みが失われているとして、昨年にオランダ・ハーグで開かれた気候変動枠組み条約第6回締約国会議の失敗を批判。「政治指導者が国際的な諸条約を履行しなければ、これまで数十年間積み上げてきた(環境面での)進歩は損なわれる」と強調した。
おそらくワールドウォッチ研究所の警告は、ブッシュ政権の特性を見抜いた上で発信されたものであろう。しかしブッシュ政権は独自の持続可能な経済政策を構築しようとしているようだ。ここに21世紀のしたたかな戦略が見隠れしている。ここでその顔ぶれをオイルに焦点をあてて紹介しておこう。
■オイルマン政権の力学
ジョージ・ウォーカー・ブッシュ大統領も父親同様、石油・ガス探削会社出身でありブッシュ家自体がオイルビジネスとは切ってもきれない関係にある。名門一族とあって、そのオイル人脈は、極めて重要な人物を政権に集結させる。やはりオイルこそがアメリカにとっての生命線なのだ。
【チェイニー副大統領】これまでに大統領主席補佐官(フォード政権)、連邦下院議員(ワイオミング州)、国防長官(1代目ブッシュ政権、湾岸戦争を指揮)を経て1995年に石油関連会社ハリバートン社のCEO(最高経営責任者)に就任する。ハリバートン社は世界第2位の石油関連サービス会社で、石油の採掘や技術供与などのサポートを行っている。またユニオン・パシフィック社やP&G、EDSの社外取締役を務め、有力シンクタンクAEIやアスペン研究所のメンバーである。実質彼がオイルビジネス界全体を代表するインナーサークルの中枢にいる人物である。
【ライス国家安全保障担当補佐官】スタンフォード大学の教授。石油メジャー、シェブロンやチャールズ・シュワブの社外取締役を務め、J・P・モルガン国際委員会メンバーであった。国際委員会会長であり、インナーサークルの権化とも表されるジョ?ジ・シュルツ元国務長官と厚い信頼関係で結ばれている。(「市場主義」対「伝統経営」参照 http://www.yorozubp.com/0004/000414.htm)
【オニール財務長官】製紙大手インターナショナル・ペーパーの社長を経て86年にアルミ最大手のアルコア入りし、87年から99年までCEO兼会長を務めた。グリーンスパン米連邦準備理事会(FRB)議長もFRB入りする直前にはアルコアの社外取締役であり、これまでふたりは長い信頼関係を築いてきた。金融界出身ではないが、ルーセント・テクノロジ?社の社外取締役を兼任し、アメリカの経団連と呼ばれるビジネス・ラウンドテーブル、ビジネス・カウンシル、カンファレンス・ボードのメンバーを務めてきた。チェイニー副大統領と同じくAEIや国際経済研究所、ランド研究所の役員でもある。
【エバンズ商務長官】天然ガス・石油会社トム・ブラウン社のCEO兼会長。ブッシュ家とはビジネスパートナーとしての関係を超えた家族ぐるみの付き合いが続いてきた。トム・ブラウン社は『ある会社』と関係が深い。
【ゼーリックUSTR代表】プラザ合意、日米構造協議、日米自動車摩擦など主要な対日政策にかかわった知日派。ブッシュ陣営のフロリダ開票監視団相談役かつ広報責任者を務めるジェイムス・ベイカー元国務長官がレーガン政権下で財務長官だったときに抜擢された。ゴールドマン・サックスのインターナショナル・アドバイザーや『ある会社』のアドバイザリー・カウンシルを務めてきた。彼もアスペン研究所のメンバーであり、CFRやブルッキング研究所にも所属している。
【カード首席補佐官】ブッシュ前大統領の下で首席補佐官代理や運輸長官を務めた父親人脈の一人で、大統領選を控えた昨年夏の共和党全国大会を取り仕切った人物である。93年から98年まで米自動車工業会専務理事として日本の自動車市場の開放で数値目標の設定を強く求め、閣僚から業界ロビイストへの転身としても注目を集める。そして99年にはゼネラル・モーターズ(GM)の副社長に迎えられた。
■GM、トヨタそしてエクソン・モービル VS ダイムラークライスラー
米自動車最大手ゼネラル・モーターズ(GM)と日本自動車最大手トヨタ自動車は1月8日、北米国際自動車ショーで、米石油最大手エクソンモービルも加えた3社で次世代自動車となる「燃料電池車」の技術提携で合意。そしてその方式をガソリン改質とすることも発表した。ここに21世紀に向けたシナリオが鮮明に打ち出される。
日本政府も時を合わせるかのように経済産業省が燃料電池分野での日本主導による国際標準化を目指すとの方針を発表した。1月22日に「燃料電池実用化戦略研究会」がその概要を最終報告書にまとめた。
この巨大連合に対して1月2日にはダイムラークライスラーが次世代環境対応車とされる燃料電池を搭載したバンを2002年の予定を前倒しして今年中にドイツ・ハンブルクの運送会社に試験的に納入する、と発表している。また、2004年までに約10億ユーロ(約1090億円)を燃料電池開発に投入する方針も明らかにした。このダイムラークライスラーが採用する方式はメタノール改質である。
なにやら壮絶な情報戦が繰り広げられているようだ。そして世界標準をめぐるガソリンかメタノールかの争いが各国政府を巻き込んで始まったようだ。
■トヨタが巻き起こす変革の嵐
2000年は日本にとって経営革命の年であった。欧米流の取締役兼任制が業界の垣根を超えて確実に広がりつつある。その中核がトヨタ自動車である。日本経済新聞からその経過を追いかけてみよう。(日付は掲載日)
00年 5月23日 さくら銀、豊田章一郎氏ら社外取締役に。
00年 9月27日 三和などの3行統合、社外取締役に奥田トヨタ会長。
00年11月16日 あいおい損保、社外取締役に張トヨタ社長。
00年11月30日 野村が経営諮問機関、奥田トヨタ会長ら社外の5人が助言。
01年 1月 4日 NECの経営諮問委、張トヨタ社長らが社外委員に
また奥田トヨタ会長は、ウシオ電機の牛尾治朗会長とともに省庁再編の目玉である経済財政諮問会議のメンバーにも選任されており経済全般の運営や財政の運営、予算編成などの基本方針を審議することになっている。このトヨタ自動車もインターナショナル・アドバイザリー・ボードを設立しており、年2回の会合を行っている。メンバーには世界的な政財界人が集結しているが、ここにポール・ボルカー元FRB議長が参加している。世界の動きをいち早く入手できる人脈を有している。
当然のことながら「燃料電池実用化戦略研究会」にも渡辺浩之トヨタ自動車常務取締役が委員となっており、茅陽一東京大学名誉教授が部会長を務める「総合エネルギー調査会」総合部会にも奥田会長が委員となっている。
■燃料電池実用化戦略研究会
「燃料電池実用化戦略研究会」は、小型燃料電池(固体高分子型)の普及、実用化に向けての戦略について検討するために1999年12月に資源エネルギー庁長官の私的研究会として設立された。燃料電池実用化戦略研究会委員には部会長として茅陽一慶應義塾大学環境情報学部政策メディア研究科教授があたり、日産自動車、旭硝子、大阪ガス、東芝、東京ガス、本田技術研究所、東京電力、コスモ石油ガス、日石三菱、トヨタ自動車等が民間から参加している。
この燃料電池実用化戦略研究会の第4回会合(2000年4月18日)が通商産業省国際会議室で開催され、この時にはゼネラルモーターズ(GM)のルドルフ・A・シュレイスが「ゼネラルモーターズの燃料電池施策及び燃料電池戦略についての概略」を発表した。
その中で、GMは燃料電池の研究を30年前から実施しており、人員的にも300名程度が燃料電池に係っていることやメタノール燃料に関してはインフラ、経済性、安全性などであまりに多くの課題があり商業ベース上現実的ではないと考えており、特に安全性については、弁護士とも相談した結果、有毒なメタノールを自動車に搭載することは望ましくないという結論に至っていることなど非常に興味深い内容が発表された。この会合の最後には定置型に関する検討を目指して住宅メーカーなど参加を呼び掛ける方針が打ち出された。
今後具体的な研究開発は、財団法人「新エネルギー財団」が自動車、電気、ガス、石油、住宅、商社など関連230社に参加を呼びかけ1月末に数10社規模で「燃料電池実用化推進協議会」を設立し、研究を進めながら必要な政策を提言することになっている。
さて彼らの究極の目標が、1月22日にネットで配信された。それは2020年には原発10基分に相当する約1000万キロワットを家庭やオフィスなどで発電するとの過激な内容である。しかも事実上の政府目標となるもので、大規模発電所から分散型電源への転換を加速し、長期的な国のエネルギー政策にも大きな影響を与えることになる。20世紀を支えてきた原発に対する挑戦の姿勢があからさまに打ち出された。とうとう日本も土台からなにかが動き始めるようだ。
■日本に飛び火する電力自由化論争
カリフォルニア電力危機の余波は、日本にも飛び火する。1月19日にその熱い議論の火蓋がきられた。表面的には「経済産業省・公正取引委員会VS電力業界」の構図となっているようだが、実際には深い闇が潜んでいる。
☆一回戦 「停電は最も質の悪い電気であり、同州の自由化は失敗であったと言わざるを得ない。(電力自由化が始まった日本でも)他山の石として参考にしたい」−1月19日、電気事業連合会の太田宏次会長(中部電力社長)
☆二回戦 「わが国も電力の完全自由化を考えているので、調査団を派遣し研究したい」−1月19日、平沼赳夫経済産業相
政府は2003年3月をめどに現行の電力小売り部分自由化を見直すことになっているが、完全自由化を軸に検討する考えを示したのはこれが初めてである。
☆三回戦 「完全自由化なんてどういう発想から起こるのかわからない。よく勉強してからものを言ってほしい」「まだ(昨年3月からの部分自由化の検証などの)勉強もしていないのに発言するのがおかしい。大臣であろうがだれであろうがそういうことだ」−1月23日、電気事業連合会の太田宏次会長(中部電力社長)
☆四回戦 「(米カリフォルニア州の電力危機について)海外での一つの事例であり、これによって電力市場で競争政策を進めるという基本線が変わるわけではない」−1月24日、公正取引委員会の山田昭雄事務総長
☆五回戦 「民間企業の代表者も加えた新たな日米経済協議の枠組みである『日米ニューエコノミー円卓会議』構想の実現に向け、訪米中の平沼赳夫経済産業相がエバンズ米商務長官に提案、米側も前向きな姿勢を示した」−1月26日、ワシントン
電力自由化のトップを切ったのはイギリスである。90年に中央電発局の水平分割・民営化を実施し、95年には小口電力供給の完全自由化に踏み切った。このイギリスから始まった電力自由化は、欧州統合の柱としてEU加盟国全体で実施されることとなり(EU指令97年2月)2007年には74%まで自由化率が引き上げられる。
すでにドイツ、スウェーデンは100%実施されており、フランスは現在23%である。
こうした中でも今回のカリフォルニア州にような事例は極めて稀である。アメリカ国内でもすでに23州で電力自由化が進んでいるが、ここでも同様の問題は発生していない。確かに今回のカリフォルニア州の問題を多角的に調査分析することは必要であるが、それが自由化そのものに結びつくものではない。
日本の電力会社が抵抗する理由は別にある。98年に電力自由化が実施されたドイツでは、料金値下げ競争により八大電力体制はM&Aの嵐の巻き込まれる。99年9月のドイツ2位のVEBAと3位のVIAGの合併、翌10月の1位RWEと6位のVFWが合併する。またRWEはスペイン最大のENDESAと資本提携するなど、再編は国内に留まらず欧州全域に拡大していく。
また電力自由化による料金値下げ競争は、欧州原子力発電を極めて困難な状況へと追い込む結果となっている。ドイツ、スウェーデンは原子力発電から撤退の方向へと歩み始める。生き残りのために、仏フラマトムと独ジーメンスは、99年12月に原子力部門の統合で合意する。こうした海外の動向を「よく勉強している」日本の電力会社にまたしても夜も眠れぬ程の脅威が覆いかぶさってきた。その実体こそブッシュ新政権そのものである。
■エンロンの揺さぶり
エバンズ商務長官がCEO兼会長を務めた天然ガス・石油会社トム・ブラウン社と関係が深く、ゼーリックUSTR代表がアドバイザリー・カウンシルを務める『ある会社』とは、アメリカの総合エネルギー会社エンロンである。わずか創業15年で電力、石炭、風力、水道、通信から金融にまで手を広げ、世界48カ国に拠点を有するエネルギー分野でのスター企業である。「規制緩和の旗手」を自認するエンロンが狙う次の標的こそがこの日本である。
エンロンのケネス・レイ会長自身がブッシュ陣営の最大の献金者であった。またブッシュ新政権には、エバンズ商務長官、ゼーリックUSTR代表以外にもブッシュ政権を実質操ることになるベーカー元国務長官、モスバーガー元商務長官もエンロンの顧問を務めている。
すでにエンロンは、昨年11月に米青森の六ヶ所村に液化天然ガス(LNG)を燃料とする出力200万キロワットの発電所を建設することを発表しており、2007年ごろから東北、首都圏の需要家に電力会社を下回る料金で供給する予定である。将来は400万キロワットまで増強する構想も打ち出している。運営するのはエンロンとオリックスが出資するイーパワーで六ヶ所村以外にも大牟田市や宇部市、北九州市、高知に火力発電所の建設を計画している。
特に六ヶ所村は原子力政策の要となる核燃料サイクル基地であることから密かに憶測を集めている。エンロンは、同時に将来のサハリンと本県を結ぶパイプラインによる天然ガス輸送構想もにらんでいるようで、ここに日本の保守系政治家が反応しないはずはない。
「燃料電池実用化戦略研究会」の委員を務める国際的なエネルギー動向に詳しい金谷年展・県立保健大学助教授の次の発言は注目に値する。
「むつ小川原を狙ったのは、エンロンの経営戦略と米国の国際戦略が結びついた結果だと思う。大型火力建設が本来の目的ではないはず」
「米国は2003年を待たずに電力自由化の新スキームを示すよう日本に求めるだろうが、バックにエンロンがいることは間違いない。電力取引市場ができれば、実際の電力供給量の10−20倍のお金が動き、大きなビジネスチャンスが生まれる。IT(情報技術)や金融技術のノウハウを駆使して、先物取引などでもうけるのがエンロンの目的ではないか」
そしてエンロングループが電力料金割引とともに発電所計画を発表した理由として金谷助教授は次のように分析している。
(1)世論を盛り上げ、電力自由化の流れを加速させる。
(2)放射性廃棄物が集中するがために国や電力会社に対して一定の発言力を持つ青森県の政治家を陣営に引き込む。
(3)サハリンからのパイプライン建設を早期に実現させ、天然ガスに関して何らかの権益を得る。
見事な分析である。平沼赳夫経済産業相が真っ先にエバンズ商務長官と会談した理由もここにある。保守勢力を分断させる戦略が有効に機能している。
またもうひとつ驚くべき推測もある。
■ラストリゾート論と対極の共存モデル
「エネルギーのゴールドマン・サックス」とも呼ばれるエンロンであるが、計画中の5プロジェクトの大形投資を肩代わりさせる出資者として「東京電力」の名前が上がっている。確かに「燃料電池実用化戦略研究会」には電力会社から唯一東京電力の白土良一取締役副社長が委員となっており、雑誌「選択」2000年9月号のインタビューでの南直哉社長の発言も見逃せない。
「エンロン流の経営は、ITを駆使しても原始的な資本主義ですよ。誰がインフラを整え、供給責任を果たすのでしょう。日米経済摩擦やNTT接続料問題のようにいずれ政府間の問題になるのは覚悟していますが、日本は『共存モデル』で対抗していかなければなりません。今の電気事業法でラストリゾートを義務づけている電力会社を解体すれば。供給責任は不経済な『官』に任せざるをえなくなります」
ここで南直哉社長がNTT接続料問題を引き合いに出したが、実は六ヶ所村では巨額の債務を抱えて経営が行き詰まったむつ小川原開発計画を引き継ぐために新会社が設立されており、この諮問会議座長に経団連会長でありNTTの社外取締役でもある今井敬氏が選出されている。NTT自体も東京ガス、大阪ガスと共同で電力小売り事業を開始しており、時期的に考えてもNTT接続料問題とエンロンの六ヶ所村進出は政治的に日米間で複雑に絡み合っているようだ。
さてこの東京電力であるが、2月8日、電力需要が伸び悩んでいることから原発も含めた発電所の新設計画を原則3−5年凍結すると発表する。しかし、翌9日には南直哉社長が記者会見し、「(青森県や福島県の原発)4基は計画通りに進めたい」と述べ、原発は発電所建設凍結の対象外とすることを明言した。わずか1日にして原発の取り扱い方針の撤回を余儀なくされたのは政府や関係自治体の強い反発を受けたためである。特に最大の要因は、原発銀座のひとつである福島県の反応だったようだ。韓国のソウル出張中の佐藤栄佐久福島県知事が4月にも予定している福島第1原発3号機へのウランとプルトニウムの混合酸化物(MOX)燃料の導入に対して否定的な考えを示した。
■ブッシュ政権の環境戦略
さてブッシュ新政権は、今のところ環境には優しくないようだ。1月29日にはエネルギー政策閣僚会議を招集し、議長にチェイニー副大統領を指名した。カリフォルニア州の電力危機のような事態が発生するのを防ぐため発電所の増設が必要だとして、クリントン時代の大気汚染などに関連した環境規制の緩和を検討する。同時に、アラスカの自然保護地域で原油や天然ガス開発を解禁にも乗り出すことを正式に表明する。
今年のダボス会議でもブッシュ新政権の環境政策に対する疑問が強く出された。「地球温暖化対策はクリントン前政権より後退する」という見方が広がる。また、環境問題の分科会でも参加者から「ブッシュ政権は経済活動を優先して環境対策を後回しにするのではないか」という意見が多く出たようだ。
こうしたなか、2月1日に「メタンハイドレート」に関するニュースが飛び込んできた。未来の有力なエネルギー資源となる可能性が指摘されているメタンハイドレートの実用化研究で、2002年1月から、カナダで世界初の天然ガス生産テストを始めると発表した。テストは日本、カナダ、米国、ドイツの国際共同プロジェクトで、深さ約1200メートルの永久凍土の掘削を主導する。
深海の地中に眠るメタンハイドレートは低温、高圧の環境でメタンガスと水が結合して固体になったもので、日本近海のメタンハイドレートの埋蔵量は燃料に換算して天然ガス約100年分とされ、採掘できれば21世紀の夢の資源になると期待されている。最近の温暖化議論でもにわかにこのメタンハイドレートに注目が集まっている。現在ヨーロッパ沖のメタンハイドレートが、水温上昇によって爆発寸前となっているが、爆発すると莫大な量の温暖化ガスが大気中に放出されることになる。
2月7日にはナイロビで開かれた国連環境計画(UNEP)の環境会議でも地球温暖化によって北極の永久凍土が解け温暖化をさらに加速する恐れがあることが報告されている。
残念ながら日本に掘削技術を求めるには無理がある。やはりハリウッド映画さながらに全世界が固唾を飲んで見守る中、ブッシュ大統領とともにチェイニー副大統領がハリバ?トンのヘルメットをかぶり深海に挑むのだろうか。
その資金を支えるのはワールドウォッチ研究所と同じロックフェラー・ブラザーズ・ファンドかあるいはロックフェラー財団かもしれない。ここにアメリカの本質がある。
第一幕は http://www.yorozubp.com/0003/000329.htm
□参考引用
週刊「エコノミスト」2000/9/12号
奥村皓一 地域独占を崩す電力自由化の大波
「選択」2000年9月号・12月号・2001年1月号
日本経済新聞、共同通信、時事通信、毎日新聞、朝日新聞、東奥日報、海外メディア、海外企業サイト
経済産業省 http://www.meti.go.jp
園田さんにメールはyoshigarden@mx4.ttcn.ne.jp
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