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円・ドル・ユーロで三等分の資産運用を

2000年12月13日(水)
北東アジア経済フォーラム上級研究員 中野 有

 トンネルを抜けるとそこは雪国であったの如く、20世紀から21世紀への世紀の変わりめには大変革はないものか。希望の未来が期待されるが、現代の世相はそうでないようだ。現状ではあまり国に期待できない。ならば、個人の発想の転換で、グローバルな市場の中でリスクを回避し、安定した資産を増やす方法はないものか。

 まずは、20世紀の大局的なリズムを考えてみたい。20世紀前半の日本は軍事的膨張に明け暮れ、後半は米国の共産主義封じ込め政策の恩恵を受け、奇跡的な経済的復興が成し遂げられた。原爆という人類史上最大の大量殺戮兵器を被った日本は、世界で唯一の戦争放棄という平和憲法を有し、日米安保の傘の下で守られてきた。

 しかし、冷戦の終焉で、イデオロギーの対立がなくなった後の米国等の戦略は世界市場を有利に操る熱戦への挑戦であり、米国に継ぐ第二の経済大国日本は、米国のライバルの存在となった。日本は米国の安全保障に頼っている故、経済という熱戦においても米国を凌駕することはありえない。

 戦前、大東亜共栄圏を提唱した石原莞爾は「世界最終戦論」の中で、東亜と米国の戦争の決勝戦、即ち太平洋戦争は回避できないが、原爆という殺戮兵器の使用により、第二次世界大戦に継ぐ人類の滅亡に関わる世界戦争は回避されると予言した。さらに石原は双方の大都市を一瞬で崩壊させる兵器の出現によって、戦争の意義がなくなり経済を通じた戦いがなされるとの先見の明を示した。事実、米ソの勢力均衡という軍拡競争は継続されたものの、冷戦を経て行き着くところは経済戦争であった。

 3年半前の東アジアの経済危機は、ドル依存の危険性を暴露し結果的に米国の東アジアへの直接投資が急増した。日本の金融資産の多くは、日米金利差により米国に流出している。日本はゼロ金利という異常現象に慣れてしまったが、消費が縮小され資金が循環しない原因は預金の果実が生み出されないことから国民が犠牲を被っている。

 ドルやユーロの金利差があまりに大きく、日本の金利も上昇すべきとの声もあるが、赤字国債や株価の影響が懸念され何ら名案が生まれない。このままでは円の暴落も十分予測される。国が国民を豊かにする金融面での国家戦略を示せないなら国民がグローバルな視点から危機管理を考慮に入れた資産運用を考えなければいけない。

 単純に世界の基軸通貨である、ドル、ユーロ、円で預金を三等分すればリスクは回避できると思う。円という通貨に全てを託そうとするから不安が増すのであって、ドルやユーロを保有することによってグローバルな感覚と安心感そして新たな投資戦略が生み出されるのではないだろうか。

 ドル・ユーロ・円の三等分でリスクが分散されるのみならず、ドルやユーロで預金すれば年率約6%の利息がつき、10年と少しで預金が倍増する。海外に銀行口座を開設するのも一案である。非居住者に対し、税金面での優遇処置も設けられている。

 最近は日本の証券会社も魅力ある商品を出しているが、海外では元本保証型の投資信託や国債と世界市場の株を段階的に組み合わせたバスケット方式で優秀なファンドマネジャーが運用する信頼度の高い商品がある。

 日銀の知り合いに、多くの日本人はゼロ金利にも関わらずどうして日本円の運用しか考えないかとの問いかけをしてみた。個人でもグローバルな知識をフルに発揮してリスク分散を行う時期に来ているとの感想をもらしていた。

 21世紀はボーダレスの時代がますます加速される。ドル、ユーロ、円圏といったある意味ではブロック経済圏につながる考えを超越して、国籍を問わず自国通貨とドル、ユーロ等と組み合わせることでリスク分散が可能となり、ひいては個人のグローバル感覚によって世界経済の安定化に導かれるのではないだろうか。


 中野さんにメールは mailto:nakanot@tottori-torc.or.jp
 
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