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心ある自民党議員は加藤新党に糾合せよ!

2000年11月15日(水)
ThinkJapan 大塚 寿昭

 自民党加藤紘一氏の「森内閣不信任案に反対はしない」という発言は、その後の彼の行動と併せて政界に大きな波紋を呼んでいる。

 加藤氏がこれを公に発言した大きな背景は「人格的資質を問われるような人物をいつまでも首班として担いでいては、自民党そのものが国民の信頼を失い本当の崩壊に繋がる」という危機感からである。一方で森首相を擁護する主流派は、政策論争に持ち込み、この騒ぎを沈静化させようと目論んでいる。森派会長の小泉純一郎氏にしても、今日(13日)の発言は政策論の調整であり、加藤氏は離党するとは言っていないと語っていた。また、12日朝のテレビ朝日のサンデープロジェクトに出演した、森派若手論客の高市早苗氏も同じく政策論争をしようと語っていた。いずれも問題を矮小化してしまいたいという意図が見えた。加藤氏の論点は認識しているにもかかわらずである。

 加藤氏の投げかけた問題は「人格的資質を問われるような人物を、総裁選挙という正式な党機関の決定を経ずしてトップとして担ぎ、そのままやり過ごそうとしている自民党の体質が問われる」ということである。しかし、彼とその一派が不信任案を通過させる事態を喚起してしまったら、その後加藤氏が自民党で首班として押されることはないであろう。党の意志に反した行動を取った人物を、それでは首相にどうぞとは自民党もできまい。

 そうなると加藤氏は離党し新しい政党を立てるしかなくなる。本人から野党に入る訳はないし、野党を代表する民主党も受け入れるには都合が悪いのである。つまり、加藤氏を首班とするには党首として迎えるくらいの形が必要になって来るからである。

 加藤新党ができた直後は相当な混乱が政界に巻き起こるであろう。そして様々な連立を模索する動きが活発になる。現連立与党側は首班指名の過半数を確保できなくなり、無所属議員あるいは加藤派、あるいは民主党内の旧保守系議員や自由党の議員に対し、自民党への引き抜きをかけて一本釣りをするしかなくなる。一方で民主党は鳩山党首を首班にと、やはり連立工作を模索する事になるだろう。初めから加藤氏を首相にする前提で加藤新党と連立するわけにはいかない。加藤新党はしばらくの間政界の鬼っ子になるのではないだろうか。

 この加藤新党が巻き起こす波紋は野党側にも大きな影響を及ぼすことになるだろう。現在の野党連合は、ハイそうですかと加藤新党と連立を組み加藤氏を首班指名することはできない。だがそうかと言って鳩山首相も実現できないということになると、民主党内の旧保守系や若手が黙っていないのではないか。もしかしたら民主党も分裂騒ぎになる可能性が出てくる。民主党内のダッシュの会は健在のようだし、あまり注目はされなかったが、東京21区補選前に民主党都連内で若手中心に都連会長更迭の動きがあった。これは臨時都連大会を開き、1票差で岩国会長を降ろし海江田新会長を選んだものであるが、ここにも民主党若手グループに火種がくすぶっているということができる。自由党の小沢党首は、この乱戦模様に時を得たりと様々な引き抜きや連立工作を仕掛けてくるだろう。

 こうなってくると注目すべきは自民党内の若手グループである。田中真紀子議員が「派閥の枠を抜けきれないで何ができるか」と言って抜けた後、何やら初めの勢いがすっかり衰えてしまった「自民党の明日を創る会」の若手諸君はどうするつもりなのか。もし不信任案が国会を通過すれば、政府側は直ちに解散総選挙を打ってくるのは間違いない。そうなった時に問われるのは、密室談合で人格的適正を欠く人物を首相に担ぐような政党に居て有権者に説明がつくかということである。 これは何も「創る会」のメンバーには限らない、心ある自民党議員諸兄全てに考えてもらいたいことであるし、彼ら自身自民党に居て選挙を戦えるかどうか、その決断を迫られる事態にもなるであろう。

 奇しくも、本日発表があったNHKの世論調査でも森内閣支持は17%と7ポイント下がり、不支持は68%と10ポイント上がった。野党の不信任案提出のタイミングにもよるが、会期末(12月1日)までには提出は必ずあるだろう。この世論の状態で総選挙となれば、自民党各議員各々の当選すら危うくなって来るだろう。

 自民党は参議院の選挙制度改革「非拘束名簿方式」の強行採決もやってしまった。これは、社会的要件、歴史的要件、世論などの背景などは何もなく、ただ今現在の政権を維持するためだけの党利党略のみで、大義名分のないまま民主主義の根幹となる選挙制度を弄んだものである。

 今問われているのは、このような旧来の体制を守るためだけに汲々としている党に、自身の政治信条を預けたまま政治家を続けるのかということである。官房長官就任を蹴った小泉純一郎氏も、今は森派会長としての仕事を全うしようとしているが、蹴った事実には何らかの腹があってのことは間違いない。YKKのもう一人の山崎氏は既に加藤支持を鮮明にしているので、小泉氏が何か新たな動きを始めてもおかしくはないと考えても良いだろう。

 今我が国は歴史上の大きな転換点にあるという認識は、国民の多くが持っていると考えて良い。こんな時にこそ政治の力が必要なのである。加藤氏は今日のインタビューでも、国民の7,8割が思っていることを汲み取れない永田町を改めたいと語っていた。この認識を明瞭にして立ち上がった加藤紘一氏を讃えたいと思う。加藤新党は間違いなくできることになるだろう。

 心ある自民党国会議員よ、そして野にある志を持った諸兄よ、加藤新党へ行け!(2000年11月13日)



 ■塩崎恭久氏の「半年も待っている余裕はない」との決意

 加藤氏は決して我利我欲で今回の行動に踏み切ったのではないのだと思います。単に75%の国民が支持していないという表面的な理由ではなく、本年4月から約8ヶ月間とられてきた政策のままでは、日本が自らの自信と力と世界の信頼を回復することは無理で、確実に参議院選挙に大敗してしまう、という切羽詰った気持ちなのでしょう。「参議院選挙で負ければ森さんから総理の座が黙っていても転がり込むのに、あせるな」とおっしゃる方が大勢おられますが、何よりも大事なことは今の自民党、そして今の日本には、後半年余りも待っている余裕などない、ということです。いわば救国、憂国の危機感からの決起なのでしょう。
 夜、仲間の代議士と意見交換をした後、加藤紘一邸ヘお邪魔し、地元での反響等を伝えて来ました。
 http://www.y-shiozaki.or.jp/oneself/index.htmlから


 大塚さんにメールはmailto:otsuka@giganet.net
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