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沖縄サミットへのNGOの熱い視線(2)

2000年05月17日(水)
萬晩報通信員 園田義明

 ♪ シアトルマンとダボスマンとお山の大将さん

 世界の巨大メディアは長期出張となりそうだ。

 7月21日から沖縄で開催される沖縄サミット(主要国首脳会議)の直前に、マイクロソフトのビル・ゲイツ氏らコンピューター業界の実力者や学識経験者が都内で一堂に会し、情報技術(IT)革命への対応を協議する構想が進んでいる。

 2000年1月31日付け萬晩報コラム「ダボスで語られる世界大再編の第2幕?」で描いた、世界の政財界トップを集めた世界経済フォーラム(通称「ダボス会議」)が開催されそうだ。

   日本経済新聞によると、会合後にデジタルデバイド(情報化が生む経済格差)の予防策を柱とした提言書を沖縄サミットの議長を務める森首相に手渡す予定で、首相周辺は「提言内容を極力、首脳会議本番の議論にも反映させていく」としている。

 2000年中の重債務貧困国40カ国が抱える約2700億ドルの債務帳消しを訴えるジュビリー2000を中心に世界的に連携を強めるシアトルマン。今年1月のダボスで開催された年次総会で、このシアトルマンを批判し、参加者からもひんしゅくをかった人物がいる。今井敬経団連会長である。接続料問題でも主役を演じるガリバ−企業NTTと新生銀行(旧日本長期信用銀行)の取締役を兼任する日本財界のボスだ。

 政府と企業の関係についての討議に、パネリストとして参加した今井会長は、シアトルマンの活動について「だれの利益を代表しているか分からない」と批判し、米シアトルで昨年開かれた世界貿易機関(WTO)閣僚会議でのNGOの大規模な抗議行動に対して「環境や人権を過度に守ったり、国際機関の運営を難しくしたりしている」と語ってしまう。

 これに対して、ドイツ銀行の広報担当者が「NGOの役割や目的は明確であり、(活動内容など)組織の情報開示にも前向きだ」と反論し、米ベンチャー企業の幹部もNGOの活動を支持するなど会場は騒然となる。

 どうやら失われたのは10年どころではないようだ。

 ♪ 価値ある1兆1000億円に

 いつものように政府は無難にこなせる自信があるようだが、今回ばかりは通用しそうにない。「ミレニアム」の重い十字架を背負っている。従って、イエスかノーの解答を迫られることとなる。予測される最悪の事態は、シアトルマンを強制的に排除することであろう。その映像が巨大メディアを通じて世界に流れるとき、「これからも失われる100年」が始まることとなる。

 この事態を避けたい政府は、沖縄サミットで史上初の各国首脳とNGOの直接対話の場を設ける構想を発表した。5月29日に行われるジュビリー2000を含めたNGOと大蔵省国際局との政策対話で方向性が決まりそうだ。

 また、その対応についても4月10日の「重債務貧困国に対する債務救済に関する我が国の追加的措置についての官房長官発表」にて、政府は非ODA債券の削減率の引き上げ(90%→100%に)と国際金融機関への拠出額の上積みの追加措置を打ち出しており、事実上全額帳消しを認めている。

 現在の焦点はその時期と方法をめぐるものとなっているようだ。日本政府は、「債務帳消しは債務国の自助努力を損ないかねない」として40年間かけて債務と同額の資金を贈与する「債務救済無償方式」を主張しており、2000年中を主張するジュビリー2000と食い違いを見せている。

 さて私は今怒っている。坂本龍一教授の『このような悲惨さを招いている債務を帳消しするのは、意外に簡単です。日本人の一人ひとりが毎年ビールを一本飲むのをがまんすれば実現できるのです。』という言葉に対してだ。どのような計算方法で出された数字なのかさっぱりわからない。稼ぎの悪い私は、ディスカウント・ストアで購入する350ml缶を平日1本、休日2本に制限されている。

 おそらくこれが現在の庶民の実情であろう。数式の訂正を求めたい。そして、我々が負担する金額が価値あるものとなるように沖縄サミットでの私達に対する誠意あるメッセージを求めたい。それは政府とジュビリー2000とが共同で行うべきであろう。

 まもなく地球環境問題が国際政治経済上極めて重要な分岐点を迎えることとなる。開発援助と環境問題は表裏一体のものである以上、「第3の道」を築く時期に来ているようだ。巧みに制度化された現在のアメリカン・グローバリゼーションもその基盤となる金融システム自体が揺らぎ始めている。その重大な欠点を補う意味でアメリカの合意をうまく引き出してほしいものだ。

 経済界も発言すべき時がきたようだ。「地球に優しい企業」がいま試されようとしている。


●日本経済新聞社 第3回(99年度)「環境経営度調査」製造業ランキング(1位〜50位)

リコー/横河電機/キヤノン/東京電力/NEC/富士ゼロックス/松下通信工業/ソニー/シャープ/九州松下電器/キリンビール/松下冷機/本田技研工業/富士通/アサヒビール/東芝/松下電器産業/三洋電機/日立製作所/キヤノン・コンポーネンツ/凸版印刷/トヨタ自動車/三菱電機/サッポロビール/大阪ガス/日本アイ・ビー・エム/東洋ゴム工業/ローム/松下寿電子工業/大日本印刷/キヤノン電子/ダイキン工業/松下精工/松下電送システム/積水化学工業/NKK/神戸製鋼所/岡村製作所/愛知製鋼/沖電気工業/日本ビクター/島津製作所/松下電工/京セラ/TDK/日産自動車/クラレ/三菱自動車工業/中部電力/松下電子工業

●語句説明

「シアトルマン」−−ポール・グルーグマン氏が呼んだ反グローバル化運動家
「ダボスマン」−−−ハンチントンが呼んだ世界経済フォーラム(通称ダボス会議)に高額の参加料を 払って
            駆けつけるグローバル資本主義の波に乗る世界の政財界トップ達
「お山の大将さん」−園田が命名。御自由に解釈下さい。

●参考・引用

日本経済新聞
重債務貧困国に対する債務救済に関する我が国の追加的措置についての官房長官発表 平成12年4月10日http://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/oda/kanbo/index.html
ジュビリー2000福岡−ニュースアーカイブhttp://www.windfarm.co.jp/members/jubilee/


 園田さんは東京在住のサラリーマン。国際戦略コラムでもコラムを執筆中
 園田さんにメールは yoshigarden@mx4.ttcn.ne.jp
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